映画『ファーストキス 1ST KISS』ネタバレレビュー:タイムトラベルの矛盾と感動しなかった理由

映画「ファーストキス 1ST KISS」を公開初日に鑑賞。

事故で夫を亡くした結婚15年目の女性が、15年前にタイムスリップして夫の死を防ごうと奔走する物語。

産経新聞の「シネマプレビュー」では、「…松村の最後の役割が観客の涙のダムを決壊させる。」と書いてあったので、期待して観に行ったのだが、感動どころか、台本に全く納得がいかず、映画の中に入り込めなかった。

個人的な評価としては「C+」。

主演は松たか子と松村北斗。

監督は「ラストマイル」、「映画 グランメゾン・パリ」と大ヒットを連発している塚原あゆ子。

脚本は「怪物」の坂元裕二。
「怪物」は是枝監督の演出も素晴らしかったが、ミスリードを巧みに使い、ラストには「怪物探しをしている観客こそが怪物ではないのか?」なっていく傑作脚本だったと思う。

一方、塚原監督の「ラストマイル」は、私が昨年(2024年)鑑賞した映画のワースト2位に選んだくらい、ストーリーに矛盾が有り過ぎる作品だった。
(詳しくは「2024年ワースト10」にて。)

「ラストマイル」の脚本は野木亜紀子だったので、今回の「ファーストキス 1ST KISS」が塚原・野木ペアだったら観に行ってなかった。

つまり坂元裕二脚本に期待して観に行ったわけだが、冒頭書いたとおり、脚本があまりにもおかしいと思う。

以後、ネタバレで3つ指摘していきたい。

① 時間軸の考え方
本作は過去を変えると変えた時間軸の現代にカンナは戻ってきているので、パラレルワールドは存在しない設定。

つまり過去を変えると、元の時間軸は消滅する「バック・トゥ・ザ・フューチャー型」で物語は進んでいく。

ところが最後のカンナと駆の15年間の世界はパラレルワールドとして描かれている。
もしパラレルワールドではないとすると、夫婦仲が悪かったカンナが過去から戻ってきて、夫婦仲の良かったカンナとぶつかってしまい、カンナが二人いる世界になってしまう。

夫婦仲が良かったカンナが高速道路でタイムスリップすればいいが、歴史は変わっているのだから、タイムスリップすることなくカンナが二人いる世界は十分に考えられる。

この映画を次のような設定にすれば、矛盾はなかったかもしれない。

カンナが過去に戻るたびにパラレルワールドが発生するが、戻ったときの現代はパラレルワールドの現代ではなく、一切何も変わっていない現代に戻る(「非」バック・トゥ・ザ・フューチャー型)が、どうしてもカンナは駆に会いたくて、何度も会いに行ってしまい、たくさんのパラレルワールドができてしまうという物語ならばギリギリ納得すると思う。

ここの矛盾は、どのように説明するのか塚原監督と脚本の坂元に聞いてみたいところ。

② 運命を知っている駆が死ぬ理由が意味不明
カンナの最後のタイムトラベルで、駆はカンナが15年前から来た妻であることを信じ、カンナから自分の死ぬ時期と「線路に落ちた赤ん坊を助けたために死ぬ」という詳細な過程まで教えてもらっているのに、自分の死を避けられなかった理由が意味不明。

赤ん坊が線路から落ちないようにすればいいだけ。
しかもそれは非常に簡単なこと。

「過去を変えると未来は変わるが、人の死の運命だけは変えられえない」という映画内設定が、どこかで描かれているのならば分かるが、そんな説明はなかったはず。

③ 駆の遺書を読んでカンナが号泣する理由が意味不明
駆の死後にカレンダーから駆の遺書が見つかり、それを読んでカンナは号泣するが、そのカンナはタイムトラベルのことも知らないし、駆が事故死することも知らないはずである。

ということはカンナが遺書を読んだ際のリアクションは、号泣なのではなく、不可解な顔になるはず。

「なんで自分が死ぬことを知っていたの?」とか、「あの人は赤ん坊を助けたのではなく、自殺だったの?」と不思議がるのが普通。

よく分からん…。
産経新聞に書いてあった「涙のダムを決壊」はどこへ。。。

産経新聞の記者は、東宝から金でももらっているのか。
産経新聞の「シネマプレビュー」は、辛口なコメントもあったりして、信頼しているのだが、次回から疑って読むことにしよう。

他の観客は泣いていたのか確かめたくなり、周囲を見回したが、泣いていた人は一人も見つけられなかった。

上映中も、すすり泣く声も聞こえなかった。

でも映画サイトの評価は高い。
どこも5点満点で4点越え。
うーん、「ラストマイル」に続き、塚原監督とは波長が合わないのかもしれない。

“映画『ファーストキス 1ST KISS』ネタバレレビュー:タイムトラベルの矛盾と感動しなかった理由” への1件の返信

  1. 一般人の私でもご感想・ご意見に全く同感です!

    それプラス、ストーリーが平坦で深掘りされてなくて、タイムスリップするシーンの連続ばかりで退屈でした。

    配役は実力派女優の大好きな松たか子さんでしたが…。
    カケル役は松村北斗さんではなく、目黒蓮さんの方がいいと思いました。
    配役の無駄遣いだと。

    ラブストーリーでもなく、一体何をテーマとして観客に訴えたいのか?

    最大の疑問は言われるとおり、何故事故死する日も理由もわかっているのに、同じく事故死する結果になるのか…?

    最後の遺書も、意味がわかりません。自殺?と思ってしまいました。
    では何故またかえでと結婚したのか…。

    観客動員数と評価が良いのは、やはり、松村北斗さんファンが押し上げているからでは、と思います。

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