2024年おすすめ映画ベスト10:普段映画を観ない人にも自信を持って勧めたい傑作たち

前回は2024年鑑賞映画の中から俺的ワースト10を選んでみた。
今回はベスト10を選出。

選出基準は「普段映画を観ない人に勧めるならば」としている。
この基準からすると、世間的に有名な作品である「哀れなるものたち」、「関心領域」、「オッペンハイマー」、「ボーはおそれている」なんかは外れる。

だって、正直つまらない。
こういう作品を面白いなんていう映画通を気取ったシネフィル人間にはなりたくないものだ。

2024年俺的お勧め映画ベスト10は次のとおり。

【10位:ぼくが生きてる、ふたつの世界】

本作はCODAの物語。

CODAとは「Children of Deaf Adults」の略で、耳の聞こえない親の下で育つ子供のことをいう。

実際にCODAとして育ったライターの五十嵐大(いがらし だい)さんのエッセイが原作。

映画では吉沢亮が演じる大が、生まれてから大人になるまでが描かれる。

幼少の頃の大は両親が大好き。

大が中学生になり、反抗期に入ると、志望高校に入れなかったことを親のせいにしたり、「こんな家に生まれてこなければよかった!」などと暴言を言うようになる。

しかし、実は言われた親よりも、暴言を吐いた大の方が自分の言葉に傷つき、忘れられないでいた。

映画のラストは耳の聞こえない母親と一緒に買い物に行くシーンになる。

買い物の最後に何気に母親が息子の大に短く語りかけ、その言葉が大だけではなく、観客の心にも突き刺さり、涙が止まらなくなる。

CODAの親子の物語に、観ている観客それぞれの親子関係を重ねてしまう。

お涙頂戴のストーリーではないのに、最後はまんまと泣かされてしまった。
派手さはないが、「いい映画を観た。」と心底思わせてくれた。

映画のルックは単館系の作家性の強いアート映画のように見えるかもしれないが、実際は間口の広い作品なので、是非、鑑賞して欲しい。

【9位:違う惑星の変な恋人】

本作は男二人に女二人+1(女)の上手くいかない恋模様が描かれる。
恋心のベクトルが一切交わらない四角関係のラブコメ映画。

主演は莉子、筧美和子、中島歩、綱啓永の4人なのだが、注目すべきは中島歩。
中島歩大爆発。

タイトルにあるとおり、登場人物の全てが変。
これは現実世界も同じで、私もあなたも彼も彼女も、みんな変なところを抱えて生きている。

だからこの世は面白い。
だからこの映画は面白い。

無茶なストーリーな割にはリアリティがあって、思わず共感してしまう。

デートムービーにぴったり。
恋人どうしでなくてもいいから、とにかく男女で観て欲しい。

鑑賞後に感想を言いあえば、男女の恋愛観の違いが分かって面白いのではないかと思う。

【8位:愛に乱暴】

吉田修一の同名小説を実写化したヒューマンドラマ。
普通に、しかも一生懸命真っ当に生きようとしている中年女性の桃子(江口のりこ)が何故か不幸に陥っていく姿が描かれる。

上手くいかない人生に桃子の精神状態は徐々におかしくなっていく。

「私ね、おかしいふりしてあげてるんだよ。おかしいふりしないと本当におかしくなっちゃうから。」

このセリフにはグッときた。
桃子ほどではないにしろ、人生とは上手くいかないもの。

何も悪いことをしていないのに、どうしても私だけに不幸がふりかかるのか。
神はいるのか。

そう思って死にたくなること度々。

そんなとき人は馬鹿なフリをして、馬鹿なことをやって精神の平衡を保つのかもしれない。

実際、映画内で狂った桃子がチェーンソーで家の柱を切るシーンは、個人的には「やれやれー!」と応援したくなってしまった。

独特で不気味で、どこか美しく、どこか不細工な江口のりこが大爆発な映画だった。
(ちなみに江口のりこのおっぱいが見れます。)

ゲス夫を演じた小泉孝太郎もよかった。
「お前といると楽しくないから。」という離婚理由も衝撃だった。

観終わった後に色々とおしゃべりできそう。
複数の中年女性で観に行くと面白いかも。

【7位:碁盤斬り】

テレビから消えて久しい時代劇映画。
主演は草彅剛。

原作は古典落語の演目の一つである「柳田格之進(やなぎだかくのしん)」となっている。
映画版も落語版も浪人である柳田格之進に濡れ衣が着せられ、その疑いが晴れるまでの物語。

全体を通して役者のアップが多いが、これがいい。
舞台劇ではできない映画ならではの良さ。

特に源兵衛を演じた國村隼の渋い顔立ちとギョロっとした目玉に釘付けになってしまう。
照明を含めた撮り方も上手く、雰囲気があって、時代劇の世界に引き込まれた。

物語の展開もテンポが良く、また、映画に漂う緊張感が最初から最後まで続き、2時間があっという間。

時代劇っていいなと思わせる作品だった。

【6位:カラオケ行こ!】

ヤクザが中学生に歌のレッスンを依頼するという、ぶっ飛んだ物語。
本作は和山やま(わやまやま)の同名漫画を原作としている。

主演は綾野剛と齋藤潤。

この映画は中学生の聡実がヤクザとの奇妙な友情を通じて愛を知り、大人に成長していく物語。
そこに観客は感動する。

前半のコメディタッチから一転、後半はジーンときて、自然と涙がこぼれてしまう。

大ヒットとまではいかないが、ロングランしたと記憶している。
鑑賞後はロングランも納得できる仕上がりになっているので、是非、未鑑賞の方はご覧いただきたい。

【5位:青春18×2 君へと続く道】

本作のCM動画を見ると18歳の男女の恋物語にしか見えない。
はっきり言ってCMを観る限りでは面白くなさそう。

ところが実際はラブストーリーどころか、恋を始められなかった超絶切ない悲劇であり、その悲劇を乗り越えるためのロードムービーであった。

主演は台湾の俳優「シュー・グァンハン」と日本の俳優「清原果耶」。

監督は「新聞記者」・「余命10年」・「最後まで行く」の藤井道人。
藤井監督は弱冠37歳。
若い。

シュー・グァンハン演じるジミーは18年間思い続けた清原果耶演じるアミに会いに日本を旅する。

旅の終着値でジミーはアミの実家にたどり着く。
そこでジミーが見たものとは・・・。

お涙頂戴のストーリーなのだが、まんまと号泣してしまう、ズルい物語。
涙を流すのはストレス発散なので、思いっきり泣きたい人は、是非、ご鑑賞あれ。

【4位:サユリ】

中古の一軒家に引っ越してきた家族が、その家に憑りついている怨念の怪物「サユリ」に殺されていく物語。

前半は定番ホラーだが、後半は残された家族による復讐劇。
ジャンルとしてはホラー映画だが、個人的な感覚からするとスポ根ラブコメヒューマンリベンジドラマといったところ。

特に後半、認知症だった婆さんの春枝が目覚め、孫の則雄を鍛え上げつつサユリに対峙していく姿は胸アツ。ほとんどアクション映画。

ラストはサユリの壮絶な過去と則雄の成長に感動の涙を流してしまった。

ビリング上の主役は南出凌嘉(みなみで りょうか)であるが、実質の主役は根岸季衣(ねぎし としえ)だった。

下らないノンリアルな映画なのに、鑑賞後感がメチャクチャいい。
人に勧めたくなる映画。

【3位:夜明けのすべて】

月経前症候群(PMS)とパニック障害という精神障害を背負った男女の物語。
恋愛物語ではない愛の物語。

順風満帆だった美紗(上白石萌音)と山添(松村北斗)は、突然の発病で人生が狂っていく。

夜の存在により人が宇宙の広さを知ったように、二人も精神障害という重い闇を背負ったことにより真の人間世界を知っていく。

つまり、生きる苦しみの中にこそ世界を知る手がかりがある。
逆に言えば、苦しみのない人生は真に生きたことにはならない。

これが本作のメッセージであり、単なる病気の紹介映画ではない。

人は誰でも生きづらさや、辛さを抱えて生きているわけだが、本作は人生の苦しみに意義を与えてくれる。

本作は感動だけではなく、生きる勇気を与えてくれる素晴らしい作品だった。

【2位:ルックバック】

本作は「チェーンソーマン」で有名な藤本タツキの同名漫画が原作のアニメ映画。
上映時間が58分と短いのだが、その分、ものすごく密度が高く、私は鑑賞後に放心状態となってしまった。

異常な絵画の才能を持った二人の少女「藤野」と「京本」の物語。
二人の少女は4コマ漫画を切っ掛けに、長編漫画を描くこととなるが、ある日、袂を分かつ。

しかし、数年後、京本の身に悲劇が襲うのだった。

私は原作を読了後に映画版を鑑賞。
映画版は原作を忠実に、かつ、完璧に再現していた。
それ故に、映画版は原作を超えていたとも言える。

「ルックバック」とは「振り向け」という意味だが、「back」は「背中」という意味もあり、「Look back」は「背中を見ろ」ともとらえることができ、こちらの方が本作の主旨に合っている。

小学生の頃の藤野は京本の画力に驚嘆し、京本の「背中」を追いかけるかのように努力を重ねるようになる。

それは京本も同じ。
互いに互いの背中を追いかけて成長していた藤野と京本。

人は無意識のうちに誰かの背中を追いかけている。
そして自分の背中もまた誰かに見られていて、そのことで勇気づけられて前に進んでいく。

特異な才能の持ち主の二人の物語ではあるが、観客は二人の生き方に自分の人生を重ねてしまうのが不思議。

2024年というだけでなく、長い日本アニメの歴史における画期的な傑作といって間違いない。

必見。

【1位:侍タイムスリッパー】

本作はタイトルどおり、幕末の侍が現代にタイムスリップする話。

インディーズ映画というか、監督である安田淳一さんの「個人自主製作映画」という方が合っていると思われるような作品。

当初の公開は「池袋シネマ・ロサ」の一館のみの公開(8/17~)だったが、口コミで面白さが伝わり、最終的には全国100館を超える映画館で上映されることとなった。

とても低予算で撮られたとは思えない仕上がりになっていたし、脚本がメチャクチャいい。

前半はコメディなのだが、徐々にシリアスなトーンとなっていき、後半には驚くべきライバルが現れ、ラストの30分は息をのむ緊張感に包まれる。

異世界に飛ばされ、過酷な状況の中で必死に生きる高坂の生き方に感動しただけでなく、自主映画でも、これだけのレベルの高い作品が作れるのだという勇気ももらえる奇跡的な映画になっている。

笑って、泣けて、ドキドキさせてくれる最高のエンターテイメント映画。

普段映画を観ない人にも自信をもって勧められる作品。
観て絶対に損はないので、是非是非、ご鑑賞あれ。

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