「名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN」ネタバレ感想:ボブ・ディランが”名もなき者”に戻りたかった理由とは?

映画「名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN」を公開から二日目に鑑賞。
アメリカの伝説的ミュージシャンである「ボブ・ディラン」の物語。

無名のディランがフォークシンガーとしてデビューしてから、フォークの枠を飛び出してエレキギターを使って、フォークソングのフェスで大ブーイングを受けながらディラン最大のヒット曲である「ライク・ア・ローリング・ストーン」を歌うまでが描かれる。

主演は ティモシー・シャラメ。
映画のタイトルは「ライク・ア・ローリング・ストーン」の歌詞に出てくる「A COMPLETE UNKNOWN」を引用している。

本作は本年3月3日(月)に発表予定の第97回アカデミー賞の主要8部門にノミネートされている。

映画が描いている時代はディランが20代だった1960年代。
日本では吉田拓郎世代のミュージシャンがディランから影響を受けているようなので、私からすると二〜三世代上の方々がリアルタイムで聞いていた感じ。

リアルタイム世代でなくても知っている曲と言えば、1963年5月にリリースされた「風に吹かれて」と1965年6月にリリースの「ライク・ア・ローリング・ストーン」。

「風に吹かれて」はアコースティックギターのみで一人で歌っている、正に我々のもっているフォークソングのイメージにピッタリの曲。

「ライク・ア・ローリング・ストーン」までくると、フォークというよりロックに近い。
歌詞も「反体制的」であるとともに、ディランの周囲の人々がディランにフォークを歌わせようとする圧力への反発のようにも受け止められる。

ただ、「ライク・ア・ローリング・ストーン」の歌詞は上流階級に属していた女性が転落して「転がる石のよう」(ライク・ア・ローリング・ストーン)になっている内容なのだが、「何にも無いって事は、何も失うものが無いのだから」という歌詞からは全てを失ったものの希望を表現しているとも取れる。

つまり、「フォーク」シンガーとして有名になった状況にうんざりしていたディランが、全てをリセットして、「名もなき者」に戻りたかったとも取れる。

映画の後半で、この「ライク・ア・ローリング・ストーン」大ブーイングの中で歌うところが本作のクライマックスと言って間違いない。

このシーンはディランがフォークの枠を飛び出す瞬間であり、ディランのミュージシャンとしても成長の瞬間でもある

逆に言うと、このクライマックスシーン以外はイマイチ。
ティモシー・シャラメ若しくはボブ・ディランのファンでなければ、正直面白い映画とはいえない。

ティモシー・シャラメ若しくはボブ・ディランのファンは、是非、ご鑑賞あれ。

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