映画「愛に乱暴」ネタバレ感想:江口のりこの演技が光る不幸な中年女性の物語
映画「愛に乱暴」を公開初日に鑑賞。
CMに魅了されてしまった。
監督は森ガキ 侑大(もりガキ ゆきひろ)。
主演は江口のりこ。
吉田修一の同名小説を実写化したサスペンスドラマ。
本作はいわゆる「単館系」作品で、映画ファン向け。
映画的な興趣があり、余計な説明はされずに余白があって、鑑賞後の余韻もある。
本作は普通に、しかも一生懸命真っ当に生きようとしている中年女性の桃子(江口のりこ)が何故か不幸に陥っていく姿が描かれる。
- 町のゴミ捨て場を掃除しても、すぐに汚される。
- バスに乗って赤子を抱く母子に席を譲ろうとしたが断られる。
- 無愛想なレジの外人。
- お気に入りのティーカップが欠ける。
- 上手くいかない手作り石鹸教室。
- 嫌味っぽい姑。
- 生返事で、抱いてもくれず、しまいには不倫して子供まで作り、別れて欲しいと言い出す夫。
- 流産の過去。
遂に桃子の精神状態はおかしくなっていく。
「私ね、おかしいふりしてあげてるんだよ。おかしいふりしないと本当におかしくなっちゃうから。」
このセリフにはグッときた。
桃子ほどではないにしろ、人生とは上手くいかないもの。
何も悪いことをしていないのに、どうしても私だけに不幸がふりかかるのか。
神はいるか。
そう思って死にたくなること度々。
そんなとき人は馬鹿なフリをして、馬鹿なことをやって精神の平衡を保つのかもしれない。
実際、映画内で狂った桃子がチェーンソーで家の柱を切るシーンは、個人的には「やれやれー!」と応援したくなってしまった。
映画のラスト近くで、警察に放火魔と疑われて走り出し、その先で偶然にも無愛想な外人の店員に出会い、その外人が桃子に向かって「いつもゴミ捨て場を掃除してくれてありがとう」と言う。
「ありがとうって言ってくれてありがとう。。。」
桃子が泣きながら言う、このセリフも忘れられない。
「ありがとう」という感謝の言葉が、いかに人に大きな力を与えているのか分かる。
「ありがとう」を口癖にしようと改めて思う。
独自固有で、不気味で、どこか美しく、どこか不細工な江口のりこが大爆発な映画だった。
(ちなみに江口のりこのおっぱいが見れます。)
ゲス夫の小泉孝太郎もよかった。
「お前といると楽しくないから。」という離婚理由も衝撃だった。
解釈が難しい映画だが、観終わった後に色々とおしゃべりできそう。
複数の中年女性で観に行くと面白いかも。
先ずはCMを観て欲しい。
思わず映画館に行っちゃうかも。