【ネタバレあり】映画「ブルータリスト」感想:ユダヤ人建築家の苦悩とアメリカ社会のリアルを描く超長尺作品

映画「ブルータリスト」を公開から4日目に鑑賞。
第二次世界大戦後、ホロコーストから逃れてアメリカで暮らすユダヤ人建築家の物語。

本作は3月に発表される第97回アカデミー賞作品賞の最有力候補作品。

ブルータリストとは1950年代に始まった建築様式の一つである「ブルータリズム」を実践する建築家のこと。

ブルータリズム建築とはコンクリート打ちっぱなしで、外壁に塗装等を一切しないことが一番の特徴。

大戦での危機を逃れ、妻と娘を残し、アメリカへの亡命に成功するハンガリー系のユダヤ人「ラースロー・トート」という男が主人公。

ラースローは妻と娘に再会を果たし、アメリカでも徐々に建築家として認められるようになる。
しかし、ユダヤ人という出自の影響もあり、なかなか仕事が上手くいかない。

そのうちに娘は夫とともにイスラエルに行くという。
その他、様々な困難と苦悩に打ちのめされるトートの人生が描かれる。

上映時間は215分(3時間25分)という超長尺映画。
ただし、途中に15分の休憩(インターミッション)が入る。

休憩中、私はスクリーンを出て、ホットドックとコーヒーを購入。
頭をリセットして、続きを鑑賞。

どうにか最後まで寝ずに観れたが、やはり疲れた。
そして、エンターテイメント性はゼロで全く面白くない。

どうして感動しないのか考えてみると、結局、我々日本人には「アメリカに住むユダヤ人」の微妙なポジションが実感として分からないからだと思う。

大戦後、ユダヤ人達はパレスチナの地に集まってイスラエルという国を作ったわけだが、それには「集まらなかった」若しくは「集まれなかった」ユダヤ人たちがいる。

その一人が本映画のラースロー。
ラースローは架空の人物であるようだが、ラースローと似たような人生を歩んだユダヤ人は多くいるだろう。

その集まらなかった・集まれなかったユダヤ人たちのアメリカでの迫害・差別。
そして「イスラエルに行っていない」という後ろめたさもあるのかもしれない。

もちろん世界中、特にアメリカに「無視できないマイノリティ」としてユダヤ人がいるからこそ、イスラエルは度重なる中東戦争に勝ち続けてきた。

しかし、そのイスラエル以外にいるユダヤ人たちの微妙な立ち位置が、正直私には分からないので、映画の世界にもイマイチ入り込めなかった。

感心するのは映画よりも、上映している映画館の方。
私は鹿児島の「天文館シネマパラダイス」という映画館で鑑賞したのだが、この映画館は採算を度外視して、この手の作品を上映してくれる素晴らしい映画館。

特に今回の「ブルータリスト」は215分。
こんなたいして客も入らない超長尺映画を、よく上映するものだ。

「天文館シネマパラダイス」さん、これからもどうぞよろしくお願いします。

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