ネタバレあり!『シビル・ウォー アメリカ最後の日』衝撃の結末と戦争の狂気を描く新感覚ロードムービー
映画「シビル・ウォー アメリカ最後の日」を公開から二日目に鑑賞。
内戦になったアメリカをジャーナリストからの視点で描いた物語。
どうして内戦になったかは描かれていないが、それは本作の製作側の「あえて」であることが鑑賞すると分かる。
分断されつつあるアメリカの現状というよりも、戦争というものが人々の心を狂わせていく面を強調している。
そういう意味では「新しい」戦争映画なのかもしれない。
私の個人的な評価としては「B+」。
製作は「A24」。
「A24」といえば「変な映画」を作るイメージがあるが、本作はいい意味でA24っぽいひねりがない仕上がりとなっている。
監督はアレックス・ガーランドというイギリス人。
主演はキルスティン・ダンストとケイリー・スピーニー。
私の中のキルスティン・ダンストといえば、2000年代にサム・ライミ監督が作ったスパイダーマンシリーズのヒロイン「MJ」。
あのMJが、すっかりオバちゃん。
お互いか。。。
ケイリー・スピーニーといえば、つい最近観た「エイリアン ロムルス」でも主演だった。
幼い顔立ちが受ければ、今後大物スターになっていくのかもしれない。
本作を鑑賞する前にCMを観ていたので、アメリカの内戦を描いた映画ということは分かっていたのだが、ロードムービーになっていたとは驚き。
(ここからネタバレ)
19もの州がアメリカ政府から離脱し、国内は至る所で内戦状態となった。
そんな中、ニューヨークにいた4人のジャーナリストが大統領にインタビューを取るべくワシントンD.C.を目指す。
ベテラン報道カメラマンのリー(キルスティン・ダンスト)は、ド新人のカメラマンであるジェシー(ケイリー・スピーニー)を連れていくことに反対したが、同僚のジョエルに説得され、一緒にワシントンを目指すことになる。
道中で様々な悲惨な出来事に遭遇し、ショックを隠し切れないジェシーであったが、徐々に成長していき、ラストのホワイトハウスでの銃撃戦でのジェシーは誰よりも前に出て撮影を行い、撃たれそうになるも、リーが身代わりとなって死んでいく。
リーの死を前にしてもジェシーは悲しむことなく前に進み、遂に大統領の射殺まで撮影。
そこで映画は幕を閉じる。
普通、ロードムービーと言えば成長の物語。
確かにジェシーはジャーナリストとして成長していくが、最後には成長を通り越して正常な感覚がマヒし狂人になっていく。
これはジェシーだけでない。
戦っている全員が狂っていく様が描かれていくが、観客はそこにリアリティを感じてしまう。
そして遂に殺人も正義となっていく。
人間(特に男)は無意識に戦いを欲し、そして戦う者を人は愛する(特に女)。
本来は忌み嫌うはずの戦争に、実は人を魅了する面があるのかもしれない。
そういう意味ではラストにジェシーが撮影した大統領の死体を囲んでいる兵士の笑顔は本作を象徴している。
何らかの主義・主張・イデオロギーを通すために始まったはずの戦いも、いつしか理由などはどうでもよくなり、ひたすら目の前の敵を倒すことに没頭していく市民。
手段のはずだった戦争が目的化していく。
どの戦争も常にそうなのかもしれない。
戦争に人を魅了する力があるならば、こんなに恐ろしいことはない。
人間が人間である限り、戦争は世界からなくならないということなのだろう。
本作は戦争の別の意味の恐怖を描いているという意味で画期的な傑作という部類に入るのかもしれない。
銃撃&惨殺シーンが大丈夫な人は、是非ご鑑賞あれ。