ネタバレ注意!映画『Cloud クラウド』の不自然すぎる5つのシーンとリアリティの欠如
本日から公開の映画「Cloud クラウド」を鑑賞。
監督・脚本は「CURE」の黒沢清。
主演は菅田将暉。
インチキ転売ヤーが追い詰められていく物語。
個人的な評価としては「B-」。
映画全体も細部も全然リアリティがない。
Cloudという単語は雲という意味であるが、現在では「クラウドコンピューティング」のことを指す場合が多く、本作でも転売はネットで行われるし、犯罪を計画するのにもネットが使われる。
「クラウドゲーム」という意味も込められているのだろうが、それで言い逃れさせはしない。
(ここからはネタばれ。)
リアリティがないというか、不自然なところを5つほど挙げてみたい。
①高額な転売
映画の冒頭で主人公の吉井(菅田将暉)が健康に関する電子機器を1つ3千円で30個買取り(9万円)、それを1つ20万円で転売し、600万円売り上げるシーンがある。
しかも瞬く間に全てが売り切れる。
そんなことあるわけねーだろ。
これは主人公の妄想なのだろうと思ったら、そうでもない。
20万円で転売できるのなら、そもそも製造会社が売ってるでしょ。
何故か同じハンドルネームを使い続けるのも理解できない。
主人公の吉井は「ラーテル」というハンドルネームを使い続けて販売するわけだが、普通ネットを通じて販売する場合、商品を受け取った側の客は販売元の評価を行う。
初めてインチキ転売をするのであれば上手くいくかもしれないが、続けていればインチキであることがバレて転売できなくなる。
同じハンドルネームでインチキ販売を続けられているのもおかしいし、吉井がインチキ転売をするのであれば、毎回名前を変えるはずなのに、「ラーテル」という名前を使い続けるのは全くリアリティがない。
②ネットを通じての犯罪仲間の募集
ネットを通じて吉井の殺人が計画されるわけだが、ここもリアリティがない。
もちろん恨みをもっていたり、自暴自棄になっている人間はいるだろうが、リスクが高過ぎて、こんなにたくさんの人間が簡単に集まるとは思えない。
もっと言えば今時ネットで殺人計画なんかしたら、すぐに通報されるでしょ。
しかも集まった人間が猟銃やら、ピストルをやらをたくさん持っているのも不自然。
③佐野と闇組織
吉井に雇われた村の青年である佐野が、物語の後半で闇組織とつながっていて、銃の調達や遺体の後始末を簡単にやってのけるが、ここも全くリアリティがない。売れない漫画の世界。
ご存じのとおり、日本のヤクザというのは今や衰退の一途をたどっているわけで、こんなわけのわからない青年に金も後払いで銃を渡し、殺しの始末までするなんて映画作って恥ずかしくないのか。。。
④秋子の行動
吉井が山奥の廃工場に連れ去られるのを恋人の秋子(古川琴音)が車で追い、吉井の前に現れるが、これも不自然極まりない。
人気のない廃工場という設定なのだから、相当な長距離を追ってきたわけだが、それを誰にも気づかれずにできるわけがない。
しかも秋子の狙いは吉井の救出ではなく吉井の持ち金。
吉井の財産が数百億円なら分かるが、そのような設定ではない中、秋子は吉井を殺そうとしてまで金(正確にはカード)を奪おうとするのは、やろうとしている殺人という行動と結果が全く釣り合っていない。
他に男を作る方がよっぽどいいし、手っ取り早いはず。
⑤ラストの銃撃戦
映画のラストで吉井・佐野VS村岡(窪田正孝)軍団と銃撃戦になるが、そもそも日本に周囲に銃声が全く聞こえないような都合のいい廃工場なんてあるのか。
あると仮定しても、あの銃撃戦にはリアリティが全然ない。
滝本(荒川良々)は2連式の散弾銃を使っているが、2回撃ったら隙ができるのは本人だって分かっているはず。
つまり、撃てば撃つほど撃たれる可能性が高くなる。
あの都合のいいコンクリートの壁も思わず笑ってしまった。
そのコンクリートに散弾銃が当たると、上部が崩れるのには更に大爆笑。
あの演出は失敗だったなぁ。
まぁ、これくらいがパッと思いつく不自然シーンなのだが、一番気に食わないのが、この作品が次回の米アカデミー賞の国際長編映画賞の「日本代表」作品になっているところ。
これが日本代表!?
冗談でしょ。
これは個人的な予想であるが、一番大事な公開から3日間の興行収入は1億も稼げないのではないか。
動員数ランキングでも5位以下で、なんなら7位くらいなのではないか。
黒沢清をレジェンド監督扱いするのはもうやめた方がいい・・・。