映画『男女残酷物語 サソリ決戦』:55年前に先取りされたセックス・スリラーとジェンダー問題
公開中の映画「男女残酷物語 サソリ決戦」を鑑賞。
1969年に公開されたイタリア映画。
日本では初公開。
監督は「知られざるイタリア残酷派」(CMに書いてあった)のピエロ・スキヴァザッパ。
原題は「Femina Ridens/The Laughing Woman」。
直訳すると「笑う女」。
つまり「男女残酷物語 サソリ決戦」は日本の配給会社が考えた邦題。
いかにも60年代らしいタイトルで私は好き。
ダサかっけぇ。
映画のタイトルにプラスしてキャッチコピーに心奪われた。
「イタリア製ウルトラ・ポップ・アヴァンギャルド・セックス・スリラー」
スリラー映画は多く観てきたが、「セックス・スリラー」なるジャンルは初めてだ。
55年前の映画なのだが、一周回って全てが新鮮。
色も、音楽も、空気感も、初めて味わう映像体験かもしれない。
映画の内容もキャッチコピーどおりのエロティックなものとなっている。
主役のメアリーは慈善財団の報道課に所属する女性。
その女性が超がつくサドの財団幹部セイヤーに監禁されて、肉体的・精神的凌辱を受ける。
しかし、次第にメアリーはセイヤーを性的に魅了し、いつしか立場は逆転していくのだった。
映画内では男性社会の象徴としてセイヤーを描いている。
セイヤーは男尊女卑どころではなく、女性を敵と見なしている。
そんなセイヤーのサディズムは、女性に対するコンプレックスの裏返しであることを見抜いたメアリーは女性の魅力をセイヤーに感じさせて虜にしていく。
セイヤーはメアリーを知るうちに、メアリーは交尾後に雄を食べてしまうメスサソリのようだと言う。
セイヤーの言葉どおり、ラストにメアリーが本当にメスサソリであったという衝撃のラストも面白い。(このあたりは観てのお楽しみ。)
映画のテーマやメッセージが、どこか昨年世界中で大ヒットした「バービー」に似ている。
そうなると本作は55年も前に先取りしていたことになる。
まぁ、ジェンダー問題は過去から未来にかけての永遠の課題ということか。
映画のテーマやメッセージを考えるのも楽しいが、そんなことよりメアリーを演じた女優ダグマー・ラッサンダーさんがメチャクチャ美しい。(ドイツの女優らしい。)
このダグマーさんが惜しげもなくヌードを何度も披露する。(ただし、直接的なセックス描写はほとんどない。)
観終わった後に気づいて驚いたのだが、この映画のレーティングは「G」になっていた。
レーティング「G」とは「General audiences」のGで、つまり誰でも観れる映画ということ。
1969年のレーティング基準を、そのまま採用したということなのか。
何故こんなエロで、アヴァンギャルドで、サイケデリックな映画のレーティングが「G」なのか。
こんな映画を小学生に観せていいのか。
いいわけない。
でも観せたい。
男よりも女性に観せたい。
女優ダグマー・ラッサンダーが演じたメアリーの裸体は老若男女、全ての人種が魅了されるだろう。
劇中の財団幹部セイヤーのように観客はメスサソリ「メアリー」の毒によって捕獲されてしまう。
是非皆さんも、この耽美な世界に浸っていただきたい。