映画「マッドマックス:フュリオサ」ネタバレレビュー:北斗の拳との意外な関係

昨日から公開の映画「マッドマックス:フュリオサ」を鑑賞。
原題は「Furiosa: A Mad Max Saga」。
マッドマックスシリーズは今回で5作品目。

5作とも監督はジョージ・ミラー。
御年79歳。

パート1は現代劇であり、現実と地続きの世界が舞台となった物語であったが、パート2以降は核戦争後のディストピアの中のストーリー。

1作目の「マッドマックス」は1979年公開。
これが大ヒットし、1981年にパート2が公開される。

1985年にパート3にあたる「マッドマックス/サンダードーム」が製作・公開されるも、不評に終わる。

メルギブソン主演の初期3部作で、その後のマッドマックスシリーズを最も決定づけた作品はパート1ではなく、パート2。

パート2の荒野の世界観や、悪役たちのSMチックな衣装には度肝を抜かれた。

何より、パート2はラストショットが印象的で、画とセリフとBGMが完璧にマッチしていて観ると決して忘れられないシーンであった。

このパート2に深く心酔した日本人が漫画「北斗の拳」を描いた原哲夫。
私が小学生の頃に「北斗の拳」を初めて読んだときの衝撃は忘れられない。

「これってマッドマックスじゃん!しかもブルース・リーも入っている!」

あの北斗の拳の世界はマッドマックスパート2の丸パクり。
そして北斗の拳は伝説の漫画となった。

とても少年誌とは思えぬ劇画タッチの描写とストーリーに当時の学生たちの心は奪われた。

マッドマックスパート2は映画界だけでなく、日本の漫画界への影響も大きいものとなった。

そしてマッドマックスはパート3から30年の時を隔て、2015年に4作目にあたる「マッドマックス 怒りのデスロード」が公開。

主人公のマックス役はメルギブソンからトム・ハーディに変更。
「怒りのデスロード」は、パート3の続きではなく、パート2のリブートという形となっていた。

この「怒りのデスロード」が世界中でヒット。
そして今回鑑賞した「フィリオサ」は「怒りのデスロード」の前日譚。

「怒りのデスロード」で大活躍した(ほとんど主役!?)女戦士「フュリオサ」の過去が描かれる。

粗々のネタバレあらすじは次のとおり。

<ネタバレあらすじ>

核戦争により世界は荒廃したが、フュリオサは「鉄馬の女」たちが守る緑の地で比較的豊かに暮らしていた。

しかし、ある日、幼きフュリオサはさらわれ、「ディメンタス」を長とするバイクにのる暴力集団に囚われてしまう。

フュリオサを救うべくフュリオサの母は単身で乗り込むも捕まり、磔にされた上で殺されてしまう。

幼いながらも芯の強さを見せるフュリオサをディメンタスは気に入り、フュリオサを連れまわす。

そのころ、ディメンタスは水を支配することにより大集団の長となったイモータン・ジョーに戦いを挑み、ジョーとの交渉にたどり着く。

その交渉の中でジョーは健康体のフュリオサを渡すよう要求。
渋々ディメンタスは了承し、フュリオサはジョーの下で暮らすようになる。

しかし、フュリオサは監禁されてる部屋から脱出。
顔を黒い油で覆い、髪を切り、少年としてジョーの集団に紛れ込んでいく。

大人になったフュリオサはジョーの警備隊に所属していた。
そのころ、ディメンタスのバイク集団は資源が枯渇しつつあったことにより、イモータン・ジョーを潰すべく、全面戦争が開始される。

しかし、知恵に勝るジョーがディメンタスを追い詰め、最後はディメンタスは残った仲間と別れて、一人バイクに乗って逃走。

ディメンタスを見つけたフュリオサは追いかけ、復讐を果たすのだった。

<あらすじここまで>

前作「怒りのデスロード」で謎だったフュリオサの出自が本作で解明された。
何故、左手が義手なのか。
何故、イモータン・ジョーの下で働いていたのか。

マッドマックスらしく前作「怒りのデスロード」に勝るとも劣らない狂ったカーチェイスシーンが続き、これぞマッドマックス!といった感じの仕上がりになっていた。

ただ、個人的にはラストのディメンタスとフュリオサの対峙シーンが印象的。
カーチェイスシーンより、よっぽど緊張感があった。

ディメンタスはフュリオサと同じく家族を残忍に殺されており、お互い同類の人間だという。

また、狂った時代に家族を失い、ディメンタスは「俺もお前も既に死んでいるも同然なのだ!」とフュリオサに告げる。

「お前はもう死んでいる。」って、北斗の拳じゃん。
北斗の拳にパクられたマッドマックスが北斗の拳をパクっている!

そこはどうでもいいが、ディメンタスとフュリオサは決して同類ではない。
しかもフュリオサの精神は死んでいない。

フュリオサは復讐を果たして満足するだけの女ではない。
未来に希望を持ち続け、決して諦めず、決して迷わず、しぶとく前に突き進んでいく、怒れる女フュリオサ。(「フュリオサ」はラテン語で「怒り」を意味するらしい。)

この強い女フュリオサをアニャ・テイラー=ジョイが見事に演じてた。
復讐劇という部分はパート1と同じで、原点回帰的な要素もあり、マッドマックスファンも納得の仕上がりになっていたと思う。

ただ、気になったところもないわけではない。

①アニャ・テイラー=ジョイの線の細さ
アニャ・テイラー=ジョイは、ちょっと体の線が細すぎのような気もした。
「怒りのデスロード」でのフュリオサはシャーリーズ・セロンが演じていたが、個人的には今回もシャーリーズ・セロンに演じて欲しかった。

②子役が可愛すぎ
映画の前半はフュリオサの幼少期が描かれるが、この子役がメチャクチャ可愛い。
しかも映画開始から相当に長く(1時間くらい?)出演していたため、アニャ・テイラー=ジョイよりも、この子の印象も強くなってしまった。

関係ないが、幼少の頃に本当は口がきけるのに、しゃべれないフリをしているところにジャッキーチェンの「少林寺木人拳」を思い出してしまった・・・。

③脚本が粗い
シリーズ全体を通していえることなのだが、脚本が粗い。
製作サイドとしてはアクションシーンメインの作品で、脚本を練るような映画ではないことを承知しているが、メッセージ性を盛り込んだものにすれば、傑作から「超」傑作シリーズになると思う。

アメリカでは一週早く公開され、どうやら興行収入が低いらしいのだが、脚本の粗さが原因の一つではないかと思う。

④突然のジャックの登場
映画の途中にフュリオサを補佐するジャックという人物が登場するが、彼の出自の説明がなさすぎ。
考えてみると前作「怒りのデスロード」のフュリオサも出自の説明がなかったが、やっぱりないと感情移入しづらい。

⑤長い
前作の「怒りのデスロード」の上映時間は2時間だったが、今回の「フュリオサ」は2時間半。
正直、冗長と思える部分もなくはなかった。
2時間に納めたらアメリカでの興行収入も高まったかも。

それでも「怒りのデスロード」を観た人は必見。
なお、「怒りのデスロード」を観ていなくても前日譚なので大丈夫。

「怒りのデスロード」を観てから観るか、観た後に観るか、どちでも楽しめるので、是非、「フュリオサ」に合わせて「怒りのデスロード」も鑑賞を強くお勧めする。

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