ネタバレ注意!映画『孤独のグルメ』初見でも満足できる理由とは?
映画「劇映画 孤独のグルメ」を公開から3日目に鑑賞。
ご存じのとおり、「孤独のグルメ」は同名の漫画が原作で、長寿のテレビドラマとして有名。
実は私は原作漫画も、テレビドラマも一切見ていない。
そんな「孤独のグルメ」初見男が映画版を観ると、どう感じるのか気になる方も多いだろうと思い、実験の意味も含めて鑑賞してみた。
映画版の本作は主人公の井之頭五郎が、なじみ客からの依頼を受けてスープのダシとなる4つの食材を探して旅に出る物語。
井之頭五郎を演じた松重豊は脚本・監督も担当。
ネット情報によると当初監督は「パラサイト 半地下の家族」のポン・ジュノを考えていたらしい。
とても初監督とは思えない仕上がり。
間違いなく今後も松重豊は監督の依頼がくると思う。
それくらい映画としての趣きのある作品となっていた。
私は井之頭五郎の食事シーンを初めて観たが、あえて上品過ぎない食べ方にしているところがいい。
そしてストーリーも大変面白く、最後にはホロリと泣かせてくれる。
個人的な評価は「A-」。
鑑賞後に、これほどの満足感と空腹感を同時に感じさせる映画は滅多にないだろう。
テレビドラマ版の「孤独のグルメ」を観ていない初見の私でも面白かったので、誰にでも自信を持って勧められる作品。
もちろんテレビドラマ版のファンならば必見。
一つ鑑賞上の注意点があるとすれば、空腹で観に行くと鑑賞中に更に腹が減って地獄を見るので小腹を満たしてからにするように。
<以下、ネタバレレビュー>
本作は、井之頭五郎がパリに住む客の松尾一郎の自宅に絵画を届けるところから始まるが、この松尾一郎を演じた塩見三省の芝居がメチャクチャよかった。
塩見三省2014年に脳出血で倒れ、その後の懸命のリハビリにより復帰されているも、今もやや後遺症が残っているご様子。
それでも塩見の芝居により観客は映画の中にグッと引き込まれる。
そして、松尾一郎と松尾の孫である千秋(杏)の強い依頼により、思わず引き受けた瞬間に主題歌の「空腹と俺」が入るところも気持ちいい。
主題歌を担当したのはザ・クロマニヨンズ。
ザ・クロマニヨンズのボーカルは甲本ヒロト。
今の若い人は知らない方も多いと思うが、甲本ヒロトは日本のパンクロックのカリスマ的存在。
甲本ヒロトはザ・ブルーハーツというロックバンドを結成し、「リンダリンダ」、「TRAIN-TRAIN」、「人にやさしく」などメッセージ性の強い名曲を作った人。
その後、ザ・ブルーハーツは解散し、メンバーを入れ替えて「THE HIGH-LOWS」を経て、2006年よりザ・クロマニヨンズを甲本は結成している。
今回の映画で知ったのだが、甲本ヒロトがインディーズ時代にバイトをしていたラーメン屋「珉亭」で同時期に松重豊も働いており、古くからの知人とのこと。
話を映画に戻す。
映画内での見どころの一つに劇中劇として出てきた「孤高のグルメ」。
井之頭五郎役を遠藤憲一が演じていたが、確かに背の高さや、やせ型の体型など、松重豊に雰囲気が似ている。
一時期、松重豊が長年演じた井之頭五郎役を降板するとの噂が流れたが、後任は遠藤憲一なのかもしれない。
そして映画の後半、食材探しからラーメンのスープ作りになっていくが、この話で泣かされるとは思わなかった。
今は離れて暮らす、オダギリジョー演じるラーメン屋の店主と内田有紀演じる韓国にいる志穂が、ラストに再開すると思いきや、しないで終わるところも余韻があっていい。
この後、二人は再会するのだろうか…。
映画が終わって、誰かと話しをしたいポイントとなる。
映画全体として、ストーリーも芝居も過剰なところがないのが満足感につながっていると感じた。
なにより、淡々と生き、淡々と人にやさしくできる井之頭五郎というキャラクターがメチャクチャ好きになってしまった。
テレビドラマ版も見てみることにしよう。
そして今年一発目に観る映画の一本として心から、自信を持って推薦できる作品であった。