【ネタバレ感想】映画『箱の中の羊』レビュー|是枝裕和まさかの失敗作?
映画「箱の中の羊」を公開から二日目に鑑賞。
主演は綾瀬はるかと大悟(千鳥)。
監督は是枝裕和。
本作はカンヌ国際映画祭で公式公開されたが、酷評の嵐だったらしい。
(上映後のスタンディングオベーションはわずか3分半)
カンヌは大衆向けの作品を評価しない傾向にある。
逆にいえば、鑑賞しやすい作品になっているのではと予想していた。
ところが、実際観てみると全く面白くない。
今回はカンヌの審査員に同感。
是枝監督の映画は『そして父になる』、『海街diary』、『万引き家族』、『怪物』に続き、本作は5本目の鑑賞になるが、少なくとも5作品中において本作が一番面白くなかった。
というか、今までの作品と少しタッチが違うようにも感じた。
本作は幼い子供を亡くした夫婦がヒューマノイドを息子として迎え入れる物語。
映画の冒頭に「遠くない未来」という文字が表示されて、舞台が近未来であることが告げられる。
しかし、映画のルックは近未来どころか、おもいっきり現代。
「人間と見分けがつかないヒューマノイドが大量生産されている」という設定上、舞台を近未来にせざるを得なかったのだろう。
しかし、いくら近未来だからといって、映画のような精巧なヒューマノイドが、数十年後にできるわけがない。
その思いが無意識の中にあり、それがネックとなって映画の中に入り込めない。
つまり本作に出てくるヒューマノイド役のキャラクターはヒューマノイドではなく、ただの子供にしか見えない。
テクノロジーというのは、皆が思っているほど早く進まないのが現実なのだ。
これから10年経過しても、20年経過しても、街ではガソリン車を人間が運転しているのである。
電気自動車による完全自動運転は理論的に可能だろうが、それが直ぐに一般化することはない。
しかし、世の専門家たちは今にも実現するようなことをいう輩が多いが、コストの話を無視していることがほとんど。
我々が生きている間に、人間と判別がつかないヒューマノイドが大量生産されることなどないのである。
子供のヒューマノイドの映画といえば、スティーヴン・スピルバーグ監督の「A.I.」があるが、「A.I.」は、自動車が現代のデザインと全く違うなど、かなり遠い未来に舞台を設定しているために、ヒューマノイドの描写に違和感を感じなかった。
現代を舞台にするならば、ヒューマノイドではなくて、モニター上で自由に動く死者を作り出すサービスを使う夫婦の物語にした方が100倍リアリティが上がったと思う。
恐らく似たようなサービスは既にあるだろうし、そのサービスにはまり込んでしまった人々の話の方が身近な問題として観ている者を映画の中に引きずり込みやすい。
「箱の中の羊」というタイトルも良くないと感じた。
このタイトルは1943年にアメリカで出版された小説「星の王子さま」の中のエピソードから着想されている。
「星の王子さま」の物語を知っている人は少ないために、映画の中では音々(おとね)がヒューマノイドの翔(かける)に読み聞かせる形で「箱の中の羊」の一節を語る。
更に「星の王子さま」に出てくる最も象徴的な「大切なものは、目では見えない」というセリフも音々は翔にしゃべる。
タイトルを「箱の中の羊」としてしまったがために、入れざるを得ないシーンとなってしまったが、実に説明的で観ていて不快。
そして極めて残念だったのが、ラストのヒューマノイドが集まって森へ移住するエピソード。
これにより、本作は完全にリアリティを捨てて、寓話になっていく。
心の広いシネフィルと呼ばれる映画マニアは勝手に色々と解釈してくれるのだろうが、私のようなただの映画好きだったりにしてみれば、全く理解不能。余韻も残らない。
日本を代表する映画監督と言っていい是枝裕和だが、正直、今回は失敗の部類に入るのではないか。
是枝映画といえば、漫画「ルックバック」の実写映画が2026年中に公開予定。
これは原作が素晴らしいだけに楽しみ。
是枝映画は次回作に期待する。