「日本アカデミー賞 vs 毎日映画コンクール」選考基準の違いが生む受賞作の差 最優秀作品賞を予想

2025年日本アカデミー賞の優秀作品が発表された。

「キングダム 大将軍の帰還」
「侍タイムスリッパー」
「正体」
「夜明けのすべて」
「ラストマイル」

日本アカデミー賞は「ノミネート」という形を取らずに、各部門とも優秀賞を5つ与えて、その中から「最優秀」を決める。

この形式にすると、最優秀賞を獲得できなくても、ネット配信の際などに「日本アカデミー賞優秀作品」と書けるから便利。

そもそもアカデミー賞は業界の人間が選ぶ、業界のための賞なので、素晴らしい方法だと思う。

個人的には「侍タイムスリッパー」に取ってもらいたいが、私情を抜きにすると「夜明けのすべて」が最優秀に輝くと予想する。

「侍タイムスリッパー」は、タイトルどおり、幕末の侍が現代にタイムスリップする話。

前半はコメディなのだが、徐々にシリアスなトーンとなっていき、後半には驚くべきライバルが現れ、ラストの30分は息をのむ緊張感に包まれる。

異世界に飛ばされ、過酷な状況の中で必死に生きる侍の生き方に感動しただけでなく、自主映画でも、これだけのレベルの高い作品が作れるのだという意味で、二重に勇気ももらえる奇跡的な映画になっている。

とにかくインディーズ映画とは思えないほどにクオリティは高く、笑いのレベルも高い。
超低予算映画とはいえ賞レースにからんできても全く不思議ではない仕上がり。

普段映画を観ない人にも自信をもって勧められる作品なので、ネット配信が始まった際は、是非是非、ご鑑賞いただきたい。

一方、「夜明けのすべて」は、月経前症候群(PMS)とパニック障害という精神障害を背負った二人の男女の物語。

単なる病気の紹介映画ではなく、「生きる苦しみの中にこそ世界を知る手がかりがある。」という力強いメッセージに心打たれ、人生に勇気と希望を与えてくれる素晴らしい傑作作品。

病気でなくても、人は誰でも生きづらさや、辛さを抱えて生きているわけだが、本作は人生の苦しみに意義を与えてくれる。

各種映画レビューサイトの評価も4点越えが多いのも納得。
是非、鑑賞いただきたい。

ちなみに「毎日映画コンクール」のノミネート作品は次のとおり。

「悪は存在しない」
「あんのこと」
「侍タイムスリッパー」
「ナミビアの砂漠」
「夜明けのすべて」

このうち「日本映画大賞」を獲得した作品は「夜明けのすべて」。

選ばれる作品が、日本アカデミー賞と毎日映画コンクールで違うのは選考方法の影響。

日本アカデミー賞は映画業界の関係者でなければなれない「アカデミー会員」の投票で決まっていくが、アカデミー会員の数は約4千人。

これだけの数になると、映画を選ぶ観点や視点だけでなく、映画を観る本数も一般大衆に近くなっていく。

だからエンタメ色が強く興行収入の高い「キングダム」、「ラストマイル」なんかが日本アカデミー賞には入ってくる。

一方、毎日映画コンクールは映画評論家、映画記者等の少数で決めていく。
そのため、映画ファン好みの作品が選ばれる傾向がある。

どちらの選考方法が正しいということはなく、選び方の違いによって選ばれる作品が違ってくるのは映画ファンとしては楽しい。

そもそも人それぞれ考え方や感覚の違いによって、ベストの映画は違ってくるので、映画賞など参考に過ぎないわけだが、だからといって映画賞に意味がないわけではない。

映画と言うのは否が応でも時代を反映するものなので、過去の受賞作品を振り返ったときに、公開当時よりも、それぞれの映画のテーマが深く感じられることだってあるだろう。

また、新たな映画ファンの獲得のためにも大変に役に立つ。

何より、どの作品が選ばれるのか考えるのは、単純に楽しい。

日本アカデミー賞の最優秀作品賞の発表日は令和7年3月14日(金)。
楽しみだ。

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