「まる」映画レビュー&ネタバレ解説:堂本剛主演の芸術家物語と荻上直子監督の独特な世界観
昨日から公開の映画「まる」を鑑賞。
主演は堂本剛。
監督は荻上直子。
私はこれまで荻上監督の作品は「めがね」、「川っぺりムコリッタ」、「波紋」の3本を観ている。
どれも、ゆったりとした独特の雰囲気の作品ばかり。
この空気感が好きな人もいるだろうが、私は好きでも嫌いでもないといったところ。
今回の作品もセリフが少なめで、特に大きな事件が起こるわけでもなくフワフワ進んでいき、フワフワ終わる。
単館系というか、アート系に近い作品。
絵画で有名な芸術家の下に大勢いるアシスタントとして働く沢田(堂本剛)が主人公。
以下、ネタバレあらすじ。
ある日、空を飛ぶ鳥たちを見ながら自転車を走行していたところ、転倒(?)して右腕を骨折してしまう。
アシスタントをクビになり、部屋で呆然としていたところ、大きな白いキャンパスの上にアリがいるのを沢田は発見する。
何気に筆で大きな丸を描いてアリを囲んでみる。
その丸からアリが出ると、またアリの周辺を丸で囲む。
気が付くと大きなキャンパスに何個も丸を描いていた。
金のない沢田は、古道具屋(片桐はいり)に行き、丸を描いたキャンパスを売る。
数日後、土屋と名乗る怪しげなアートディーラー(早乙女太一)が沢田のアパートに現れ、丸を描いてくれたら100万円で買い取ると言う。
実は沢田が描いた丸が高値で買い取られ、世間で話題となっていた。
困惑する沢田だったが、とりあえず丸を何枚も描いて土屋に見てもらう。
しかし、土屋は欲望が見えて買い取れないという。
悩んだ沢田は、以前、偶然に会った謎の先生(柄本明)に相談する。
先生は「もがいてみればいい」というアドバイスを送る。
その後、沢田は壁、障子、水槽など、あらゆるところに丸を描いていく。
無欲の丸を描くことができるようになった沢田は認められ、新進気鋭の芸術家としてデビューする。
ある日、丸ではなく、自分の描きたい絵をキャンパスに描いて野心的なギャラリーオーナーである若草(小林聡美)と土屋のところに持っていく。
丸でないとダメと言われ、沢田はその絵の中心に手で丸を描くも、その丸の中止を拳で突き破って立ち去っていく。
その破れた絵が海外の美術館で展示されるシーンで映画は終わる。
ストーリーとは直接関係ないが、沢田の隣人に人生に悩む売れない漫画家である横山が何度も登場するが、これがいい。
この横山という役を綾野剛が演じている。
私は演技の上手い下手は分からないが、自分が綾野剛の芝居が好きだということを改めて本作で感じた。
作品全体としては冒頭に書いたとおり、ゆったりとした感じで進み、スピード感はない作品なので、荻上監督が作り出す独特な雰囲気が好きな人には面白いと感じると思う。
ただ、映画ファン以外には、さほど勧めることはできない作品であることは間違いない。