【ネタバレあり】映画『ミッキー17』感想・考察!ナウシカ&トトロの影響?ポン・ジュノの左翼思想も分析
今週から公開の映画「ミッキー17」を鑑賞。
監督は「パラサイト 半地下の家族」のポン・ジュノ。
主演は ロバート・パティンソン。
本作はクローン人間を簡単に作り出すことができる未来が舞台のSFブラックコメディ。
何度も人体実験により殺されては記憶をコピーしたクローンとして生き返る仕事「エクスペンダブル(使い捨て労働者)」に就いたミッキーの物語。
地球で借金を背負ったミッキーは資本家の呼びかけにより多くの人たちと共に「エクスペンダブル」として宇宙船に乗り込んで別の星を目指す。
その中でミッキーは17回死に、最後に「ミッキー18」がクローンとして作られる。
しかし、ミッキー17は死んでいなかった。
「クローンは一人ではならない」という規則を破ったミッキー17・18は、爆弾を背負わされて移り住もうとしている星に存在する無数にいる生物「クリーパー」の中に放り出されていくのだった・・・。
この「クリーパー」のルックスは完全に宮崎駿監督の「風の谷のナウシカ」に出てくる王蟲(オーム)。
ポン・ジュノ監督も「宮崎駿監督の作品は尽きないインスピレーションの源になっていると思います」と認めている。
ただ、インスピレーションというかマネ。
特にクリーパーが集団で襲ってくるシーンは丸パクリ。
更にクリーパーの動きは、「となりのトトロ」の「ネコバス」の足の動きからパクっているらしい。
まぁ、映画なんてパクリパクられの世界なので面白ければOK。
ただし、ナウシカとは映画のテーマは違う。
「風の谷のナウシカ」は生態系・自然環境を主に取り扱っているが、「ミッキー17」は搾取される底辺労働者の資本家への暴力革命。
簡単にいうと共産主義革命。
思えばポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」も、同じテーマ。
いかにポン・ジュノ監督が左翼思想家であるかが、よく分かった。
ポン・ジュノ監督に限らず、アーティストというのは左翼・リベラル思想家が多い傾向にある。
それは左翼思想が理想主義的であるところからきているわけだが、たいていの場合、理想ではなく幻想・夢想であるから困りもの。
「人は資本家から、伝統から、歴史から自由になるべきだ!」という思想は、美しいようで、謙虚さに欠けていて、しかも現実離れしている。
今は左翼思想が疑われ、「伝統と歴史から謙虚に学ぶべきではないか」という時代に入っていると愚考する。
そういう意味では、「底辺労働者と資本家の戦い」なんて作品は時代とズレているような気がする。
個人的な評価としては「B+」。
思想はともかくエンタメとしては悪くなかったと思う。
なお、本作は「ミッキー7」という小説が原作。
原作小説での映画よりも死ぬ回数が少なく、クローンは「ミッキー8」までが作られる物語のため、タイトルの数字が原作と映画では違う。
原作の「ミッキー7」は2022年に発表された小説。
つまり、小説が発表されて直ぐに映画の製作が開始されたということになる。
配給は「ワーナーブラザーズ」で、製作は「プランBエンターテインメント」で、この製作会社は俳優のブラット・ピットが創業し、所有している会社。
そのため、「ミッキー17」の製作総指揮はブラット・ピット。
今回の「ミッキー17」の映画化の企画はワーナーブラザーズなのか、プランBエンターテインメントなのか、ブラット・ピットなのか、ポン・ジュノ監督なのかは分からないが、制作費が1億1,800万ドルとメチャクチャ高い。
この手のビッグバジェットの映画は宣伝費も相当にかかるため、制作費の3倍以上の興行収入がないと黒字にならないとされている。
しかし、日本より先に公開されている北米では、かなり厳しい興行収入らしい。
やっぱり時代とのズレが興行収入に現れているのではないかと感じざるを得ない。
是非、左翼ドリーマーではなく、真のリアリストによる監督による真に時代を反映した映画が作られることを望む。