映画『未来』ネタバレ解説|原作小説との違いと衝撃ラストを考察
映画「未来」を公開から二日目に鑑賞。
映画鑑賞当日の午前中に原作小説を読む。
小説の多くは300ページ程度のところ、本作は500ページ弱あり、読み終えるのに時間がかかってしまった。
原作小説は「イヤミスの女王」と呼ばれている湊かなえの作品。
「イヤミス」とは「読後感がイヤなミステリー」のこと。
本作も超がつくほどのイヤミス。
これでもかというほどの不幸話が続き、ラストもハッピーエンドとは言えない形で終わる。
私も嫌な気分になって読み終えて、映画を観たいとは思わなかったが、映画を観ることを前提に小説を読んだので仕方なく映画を鑑賞。
上述したとおり、長めの小説なので、映画版は改変と省略箇所が多い。
原作小説を読んだので、映画の違いを挙げていきたいのだが、一つ一つ説明するよりも、原作小説のあらすじを示した方が早いと思う。
原作小説は六章に分かれている。
各章の概要は次のとおり。
【序章】
章子が章子の友人の少女とともに長距離バスに乗るシーンから始まる。
(友人の少女は亜里沙であるが、まだここでは名前は分からない。また、映画で登場した篠宮先生は出てこない。)
バスの中で章子は30歳になった未来の章子からの手紙を読み返す。
【章子】
本章は全て少女の章子が30歳の章子宛に書いた手紙の形式となっている。
この章は本作全体の半分弱程度を占めていて、最も長い章となっている。
本章での多くの手紙の中で章子の小学四年生から中学生までの様子が描かれ、次のようなエピソードが語られる。
- 病死した最愛の父との思い出。
- 母は父が死ぬ以前から人形のようになってしまう精神的な病にかかっている。
- 父の死後、林という若い男性の先生がサポートをしてくれた。
- 林先生が章子の母「文乃(あやの)」を愛してしまい、学校で問題になり、呼び出され、PTA等の前で林先生は愛していることを告白するも母から拒絶されてしまう。
- 父方の母が現れて、章子を引き取ろうとするも章子は母との暮らしを選ぶ。また、祖母から母が若い頃に自宅に放火して父と兄を殺していることを聞かされる。
- 母が働き始め、そこで早坂という料理人と付き合うこととなり、遂には独立して早坂の友人である須山とともに店を始める。開店当初は客がきたものの、徐々に売り上げは減少していく。
- その頃、中学生になった章子は同級生の実里のいじめの対象になり、章子の使用済みのナプキンを教室に晒し、同級生の男子が臭いで嘔吐してしまう。
- そのいじめにより、本当に自分が臭いのではないかと思い始めた章子はコンビニでコロンを買って体中に塗りまくる。
- コロンの匂いを漂わせたまま店に帰ると、早坂は激怒。その様子を金持ちの猪川に見られる。猪川は早坂をオープン予定の店の料理長にする気でいたが、やめることを早坂に告げる。
- 激怒した早坂は章子に暴力をふるい、以来、章子にとって早坂は恐怖の対象となる。
- しかし、店が火事になり、早坂との同居は終わる。(文乃にふられて頭がおかしくなった林先生が放火したとされる。)
- 再び親子の二人暮らしが始まるも、いじめが原因で章子は不登校。そこで章子の同級生の亜里沙からの手紙を切っ掛けに亜里沙との交流が始まる。
- 亜里沙とともに章子は登校。再び実里のいじめが始まるが、亜里沙が実里にタンカをきって助ける。
- 章子は亜里沙から智恵理という定時制高校に通う先輩を紹介され、3人の交流は深まっていく。
- 章子は智恵理が使っていたパソコンで父が残したフロッピーディスクの中身を見て驚愕する。
- そのころ章子は亜里沙から修学旅行をキャンセルすれば、旅行積立金が返却されるので、その金で子供たちの憧れの遊園地「ドリームランド」に行こうと誘われる。
- 章子は亜里沙の提案に賛成し、亜里沙の弟「健斗」も連れていくこととなった。
- しかし、弟は自殺して死んでしまう。学校でのいじめが原因と思われていたが、実は早坂と早坂の友人で亜里沙の父である須山で行っていた売春に弟が使われていたことが判明する。しかも、健斗だけでなく章子の母も売春をさせられていた。
- そうして章子と亜里沙は早坂と須山をタバコのニコチンを使って毒殺することを決意していく。
【エピソード1】
本章は亜里沙の一人称視点で語られ、概要は次のとおり。
- 亜里沙の父親「須山」は日常的に家族へ暴力をふるう男であったが、病死する直前の妻(亜里沙の母)には優しかった。
- 亜里沙にも章子と同様に30歳になった亜里沙からの手紙が届いたことが語られる。(そこには今でも健斗と仲良くやっているなどと書かれており、未来からきた手紙ではないことが仄めかされていく。)
- また、親しかった智恵理が父親から性的虐待を受けて妊娠・流産するなどの壮絶な過去を持ち、その影響で智恵理は二重人格者となり、遂には自宅を放火してしまう。
章の最後は序章のバスに乗っているシーンで終わる。
【エピソード2】
本章は林先生の前の担任であった篠宮真唯子の一人称視点で語られ、概要は次のとおり。
- 篠宮は両親に捨てられ、幼少のころから母方の祖母と二人暮らしだった。
- 祖父母が所有していた山奥の土地が高速道路建設のために一千万近い値で売れ、これを篠宮の大学の学費と生活費にあてることになった。
- 進学した篠宮は映画好きの原田という青年と知り合い、親密になっていく。
- 祖母が亡くなり、遺品を整理していると自分を捨てた母が現れ、遺産を全て奪われてしまう。
- 学費に困った篠宮は映像制作会社に騙されて、アダルトビデオに出演してしまう。
- ビデオ出演は先生になる前の出来事であったが、篠宮が働く小学校で実里の母親によりバラされてしまい、辞職することになる。
- 退職が決まった篠宮は、退職の前に家庭に問題をかかえている様子の章子と亜里沙に向き合うことにする。
- 篠宮は病床の章子の父に面会し、父から章子に未来からの手紙を書くことを頼まれる。
【エピソード3】
本章では章子の父「良太」の一人称視点で、良太がフロッピーディスクに書いた内容が語られる。
主な内容は良太が高校生のときに出会った妻「文乃」(本名は「真珠」(まじゅ))との出会いの秘密となっている。
概要は次のとおり。
- 高校生の良太は同級生で県議会議員を父に持つ森本誠一郎とケンカをきっかけに交流が始まり、森本の自宅に行くことになる。
- そこで良太は森本から隣の部屋に裸の女がいるから好きにしていいと告げられる。
- 部屋に入った良太は欲望が抑えきれずに女を犯してしまうとともに、その女に恋してしまう。
- その女は森本の妹で、中学生の「真珠」であった。
- 後日、良太は再び森本の家を訪れて森本に金を渡すとともに売春をやめて欲しいと頼む。
- 良太は金を私も真珠の体を求めることなく、森本の家で菓子作りを始める。
- 菓子作りを通じて真珠も兄の森本との交流も深くなっていき、遂に森本は、どうして妹を使って売春をしているのか告白する。
- 実は真珠は県議会議員の父に性的虐待を受けていた。そのことを知った森本は自分も悪魔になってやると決意し、売春を始めたという。
- しかし、良太との交流を通じて、忘れていた「罪悪感」が芽生えて、森本は父殺しを宣言する。
- 森本はタバコのニコチンを使って毒殺し、良太に家に火を放つよう依頼した。
- 良太は真珠を解放するために森本の計画を受け入れて、火を放つ。
- 森本と真珠はバスでドリームランドに行く予定であったが、森本はドリームランドには行かず、父とともに焼け死に、真珠は放火の罪をかぶるのだった。
【終章】
本章では章子の一人称視点で、序章の続きが描かれる。
概要は次のとおり。
- バスに乗る前に章子は早坂に毒を飲ませてアパートに火を放つ。
- 買い物から帰ってきた母の文乃は事態を把握し、自分はアパートに残り章子を逃がす。
- 章子と亜里沙はバスに乗り、ドリームランドを目指す。
- 亜里沙も父親に毒を飲ませたが、火はつけれなかったという。
- ドリームランドに到着し、入口を前にして章子は入場するのをやめて、きちんと助けを求めようと亜里沙に告げて、亜里沙も同意したところで終わる。
<原作との違い>
こうして原作のネタバレあらすじを書くと映画との違いがよくわかったかと思う。
主な違いを整理すると次のとおり。
- 映画では林先生、章子の祖母、智恵理、森本誠一郎が省略されている。
- 映画のビリングを見ると篠宮真唯子先生を演じた黒島結菜の単独主演となっているが、小説の主人公は章子で、小説での篠宮は「エピソード2」にしか出てこない。
- 真珠の兄である森本誠一郎を省略しているため、兄による真珠の売春行為のエピソードが映画にはない。
- 映画には篠宮先生が亜里沙にも未来からの手紙を送っていることが分かるシーンがない。
- 映画での亜里沙は父を殺せなかったと言ったが、原作小説では毒を飲ませている。
- 映画ではエンドロールで少年院らしきところで篠宮先生と章子が面会するシーンがあるが、原作小説にはない。
- 映画ではモノクロで篠宮先生がインタビューに答えるシーンがあるが、原作小説にはない。
長い小説を2時間に短縮しているので仕方がないと思うが、各キャラクターの不幸エピソードが薄まってしまっている。
ただし、映画もきちんと「イヤミス」になっていたとは思う。
私は「イヤミス」なんて好きでもなんでもないし、なんで金払って嫌な気持ちにならなきゃいけないと思うし、なんでこんな読後感&鑑賞後感の悪い作品を映画化するのか不思議でたまらない。
もちろん「イヤミス」好きが世に多くいるから小説としても、映画としても成立するのだろうけど。
「イヤミス」好きの人って、人の不幸を感じて安心を得ようとしているのかな・・・。
とにかく「イヤミス」好きの人には超おすすめ作品。
映画と合わせて原作小説もご覧あれ。