「室町無頼」感想とネタバレ：薄っぺらい脚本と描写が惜しい時代劇アクション

映画「室町無頼」を公開初日に鑑賞。

舞台は室町時代の京の都。
大飢饉と疫病により多くの民が借金に苦しんでいるところ、無頼漢の蓮田兵衛が一揆を主導し、借金の証文を奪うべく幕府軍に戦いを挑む物語。

主演は大泉洋。
監督は入江悠。
垣根涼介が書いた同名小説が原作となっている。

鑑賞前に映画館の予告動画を何度か観ていたが、面白そうとは感じなかった。
それでも、頑張って東映がIMAX用に作った時代劇なので観てやるか、という妙な上から目線で鑑賞。

残念ながら予想的中のイマイチ作品。
個人的な評価としては「B－」。

アクション娯楽大作として、お金と時間と膨大なエキストラを使って撮影しているのは分かるが、脚本と描写が薄っぺらい。

まず各キャラクターの造形が薄っぺらい。
主人公の蓮田兵衛の過去は全く描かれず、どうして無頼漢をやっているのか、どうして武術に優れているのか、観ている方には出自が分からない。

だから感情移入できない。

その他の主要キャラクターも同じ。
そして各キャラクター間の関係性も不明。

蓮田兵衛とライバルである骨皮道賢（堤真一）との関係も悪友であるというくらいの情報しかない。

松本若菜が演じた遊女との関係もよく分からん。

更にいえば、映画の前半、幕府側に「伊勢定親」という民と政治を憂う人物を登場させているのに、後半に活かされていない。

一揆のシーンは、それなりに迫力があったが、夜が明けてから主要キャラのみとなって幕府と戦う場面は良く分からない。
何千といた他の人はどこに行っちゃったの？

そもそも映画のタイトルに「無頼」という単語が入っているにも関わらず、無頼を描いているとは思えない。

無頼とは「無法者＝アウトロー」という意味と、「誰にも頼らない」という二つ意味があるが、本作はどちらにも当てはまっていない。

蓮田兵衛が一人で借金の証文を奪いに行くのなら「無頼」であるが、徒党を組んで一揆をしているわけだから、誰にも頼らないという意味での無頼とはいえない。

また、一揆をしている人々をアウトローというのも無理がある。
だから、ラストに「無頼」という文字が掲げられるシーンも胸に迫ってこない。

描写も重厚さに欠ける。

長尾謙杜が演じた才蔵の修行シーンや、ラストのワイヤーアクションは面白いが、あまりにもノンリアルで漫画チック過ぎる。

物語の途中で超絶でかい金棒を持った怪力のキャラクターがでてきて目を引くが、映画全体をチープな感じにしてしまっている。

PG12というレイティングも中途半端。
思い切ってR18のエログロ作品にした方が話題を呼んだのではないか。

キャストも、これでよかったのかと疑いたくなる。
大泉洋も、堤真一も、動きは悪くないが、「アクション」映画なのだから、もっと若くてキレキレの動きができる若手でもよかった気がする。

それなりにはヒットすると思うが、大ヒットまでにはいかないと予想する。
時代劇は金がかかるだろうから、制作費を上回る興行収入に届くのか心配。
大きなお世話か。

とにかく自信をもって人に勧められるような作品とはいえず、同じ娯楽アクション大作なら「ビーキーパー」を勧めてしまう。

まぁ、色々とディスりまくったが、東映には今後も時代劇に挑戦して欲しい。