自主製作映画『侍タイムスリッパー』が話題沸騰!大ヒット作『カメラを止めるな』を超える魅力と感動を語る
鹿児島では9月13日から公開された「侍タイムスリッパー」を鑑賞。
インディーズ映画というか、「個人自主製作映画」という方が合っていると思われるような作品。
本作は安田淳一さんという方が監督をされている。
普段、安田さんは幼稚園の発表会や、ブライダル撮影などで生計を立てていらっしゃるとのこと。
更に安田さんは父親が亡くなったことを切っ掛けに米作り農家を継いでいる。
そんな安田監督であるが、映画製作は本作が3本目。
予算もない(恐らく制作費は5千万円以下)ため、スタッフは10名程度。
当然、安田監督は監督だけでなく脚本、撮影、編集まで行っている。
「侍タイムスリッパー」の当初の公開は「池袋シネマ・ロサ」の一館のみの公開(8/17~)だったが、口コミで面白さが伝わり、現在では全国100館を超える映画館で上映されることとなった。
大幅な拡大公開となった現状を受けて「第二の『カメラを止めるな』」などと言われている。
どちらも鑑賞した私から言わせてもらうとクオリティは「侍タイムスリッパー」の方が高いと思う。
「カメラを止めるな」は、トリッキーな脚本が話題になったが、「侍タイムスリッパー」はインディペンデント映画とは思えぬ王道な物語。
王道なストーリーなのに面白いのだから不思議。
脚本、撮影、照明、音楽の全てにこだわり抜いたからこそ王道でも面白く観えるのだ。
私の評価はA+。
とても低予算で撮られたとは思えない仕上がりになっていたし、脚本がメチャクチャいい。
今年公開の映画の中で、「ルックバック」に続き、決して見逃してはならない画期的な作品だと思う。
映画の一部はお金のかかる時代劇になっている。
無名監督の安田さんが、どうして時代劇を撮影できたのか。
それは、脚本があまりにも素晴らしいので、感動した東映京都撮影所の方々が全面協力してくれたから。
衣装もセットも激安で貸してくれたらしい。
その結果、メジャー会社が作った作品に勝るとも劣らない仕上がりになっている。
「侍タイムスリッパー」のあらすじは、タイトルどおり、幕末の侍が現代にタイムスリップする話。
会津藩の高坂新左衛門(山口馬木也)が長州藩士を討つよう密命を受けるが、標的の男と刃を交えた瞬間、落雷によって気を失ってしまう。目を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所だった。
高坂は自分が140年の時を超えたことを知るとともに、時代劇ドラマに感動し、斬られ役になることを志していく。
「侍が現代にタイムスリップする」という設定自体に新鮮味はない。
それにも関わらず「脚本がいい」と感じさせるところが凄い。
もちろん脚本だけでなく、監督の演出力、撮影力のレベルも高い。
低予算なので「超」がつくほどの有名俳優は出ていないが、多くのベテラン俳優が出演しており、いぶし銀の演技を披露してくれる。
前半はコメディなのだが、徐々にシリアスなトーンとなっていき、後半には驚くべきライバルが現れ、ラストの30分は息をのむ緊張感に包まれる。
しかも映画の最後に、ちょっとした落ちがあるのだが、これが上手い。
特に印象に残ったシーンはタイムスリップしてきた高坂が、今の豊かな日本に感動するところ。
当たり前の日常に感謝せねばと胸が熱くなった。
また、江戸幕府側であった会津藩が敗れ、残った会津藩が皆殺しのような状況になったことを知って自分の現状に虚しさを感じて高坂が泣き崩れるシーンは観ている私も涙が出てきた。
ストーリーは完全にノンリアルなのに、高坂の気持ちがリアルに伝わってきて心が動かされた。いかに映像と脚本のクオリティが高いかが分かる。
異世界に飛ばされ、過酷な状況の中で必死に生きる高坂の生き方に感動しただけでなく、自主映画でも、これだけのレベルの高い作品が作れるのだという勇気ももらえる奇跡的な映画になっている。
ちなみに本作で助監督役で出ていたヒロインの「沙倉ゆうの」さんは、本作の本当の助監督でもあるらしい。
沙倉ゆうのさんが演じた役が非常に魅力的で、この映画の面白さを倍増させている。
別の意味での一人二役、本当にお疲れさまでした。
とにかくインディーズ映画とは思えないほどにクオリティは高く笑いのレベルも高い。
年明けの賞レースにからんできても全く不思議ではない。
普段映画を観ない人にも自信をもって勧められる作品なので、是非是非、ご鑑賞あれ。