「SAW X」ネタバレレビュー:デスゲームの質は高いけど…脚本に物足りなさ
映画「SAW X」を公開初日に鑑賞。
SAWシリーズは末期がんのジグソウが真面目に生きようとしない市民を捕まえてきては、自己犠牲を伴うデスゲームを行わせる恐怖映画。
何を隠そう、私はSAWシリーズの大ファン。
パート1が2004年公開で、2010年まで毎年10月に連続で公開され、当時は秋が楽しみだった。
とにかくパート1の衝撃のラストに驚かなかった人はいなかっただろう。
低予算ながら、若き日のリー・ワネルとジェームズ・ワンが練り練った脚本が産んだ奇跡のスリラー映画。
音楽も良かったし、配給会社であるアスミック・エースがつけた「ソリッド・シチュエーション・スリラー」というキャッチコピーも画期的だった。
今回の「SAW X」もなかなかのデスゲームで、観ていて超ドキドキのシーンの連続。
オチは弱かったが、デスゲームはよかったので個人的な評価は「B+」。
「A」にしないのは脚本。
練り上げられた感じがなかった。
それとCM戦略も悪かった。
本作はCMのとおり、末期がんのジグソウであるジョン・クレイマー(トビン・ベル)が、特別な治療のためにメキシコに向かい、そこにいたニセの医師たちにだまされ、彼らをデスゲームにかけるという物語。
本編もCMのとおりに進むので、最初にアメリカで治療を紹介した嘘の癌患者もグルであることが最初から観客に分かってしまうので、ラストシーンに驚きがなくなってしまった。
逆に言えば、CMでは「ジョンが詐欺集団にだまされる」というストーリーは隠すべきだった。
それとデスゲームの途中で詐欺集団の仲間が入ってきて、ジョンから銃を奪って仲間を助けることになるが、シリーズを観ている人間からすると、「これもジョンの計画どおりなんだろうなぁ」ということが分かるので全くドキドキしない。(ただし、途中で少年が入ってくるのは計算外という設定のよう。)
更に避けられないツッコミどころが二つあって、一つは俳優の年齢。
本作「SAW X」は、パート1とパート2の間の物語。
しかし、パート1が公開されたのは今から20年前の2004年。
当然、俳優は20年分、年齢を重ねる。
しかも、アマンダも出演するが、演じたショウニー・スミスは御年55歳。
55歳が20年前の35歳を演じるのは、どうしても違和感がある。
どうしてもオバちゃん。
もう一つのツッコミどころがデスゲーム施設問題。
ジグソウことジョン・クレイマーは遠いメキシコに来ているはずなのに、いつデスゲームの施設を作ったり、持ち込んだりしたのか。
まぁ、これは目をつぶるしかないだろう。。。
いろいろとツッコミを入れたが、デスゲームにはドキドキした。
最初はメインのビジュアルにもあった、目にホースをつなぐデスゲーム。
どんなゲームかと思っていたら、目玉を吸い取るというゲーム。
このアイデアは過去の作品にないもの。
ただ、ゲームのルールがしょぼい。
自分の指を折るだけ。
このゲームは私でもクリアできそう。
まぁ、ジグソウの頭の中の妄想でのゲームだったが。
続いてのゲームは自分の両腕に埋め込まれた爆弾を腕の筋肉をそぎ落としながら除去するというもの。
これもギリギリ私にも勝利できるかも。
3番目が自分の足を糸のこぎりで切り落とし、何故か骨髄を吸い取るというゲーム。
これはムリだわ。
劇中の女性は足を切り落とすことには成功。
これだけで勝ちにしてあげてよぉ。
ただ、これで勝ちにさせてあげると、過去のゲームにも似たようなものがあったので、本作では「骨髄を吸い取る」という訳の分からないルールになっていた。
4番目のゲームは自分の脳を取り出すというもの。
これもムリゲー。
しかし、劇中の男性は脳の切除までは成功する。
ありえねぇーーー。
せっかく脳を切断したのに、タイムオーバーでゲームオーバー・・・。
5番目は片手片足を鎖に繋がれた状態で釣り上げられ、高温の熱風を当てられ、自分の手足の骨をハンマーで砕いて脱出するというもの。
これは私でも勝てるかも。
その後、詐欺集団の仲間が途中で入ってきて、ジョンの計画通りに進み、最終的には黒幕の女と、その愛人の男が部屋に閉じ込められて殺されるわけだが、肝心な二人の殺し方にグロさがなくて残念。
ラストはジョンをダマした偽の癌患者がゲームにかけられるところで映画は終わるが、エンドロールの後にゲームに負けたシーンを入れて欲しかった。
今回の「SAW X」の監督はケヴィン・グルタート。
ケヴィン監督はパート6・7(ソウ ザ・ファイナル 3D)の監督を務めているだけでなく、全ての作品の編集も担当している。(スピンオフの「スパイラル:ソウ オールリセット」を除く。)
つまり、ケヴィン監督はソウシリーズを深く理解しているので、今回の「SAW X」もSAWらしさが失われていないので、ソウシリーズのファンは必見だと思う。
ただし、SAWシリーズを観たことがないひとはパート1とパート2を観てから鑑賞するようにしていただきたい。