「青春18×2 君へと続く道」ネタバレ!感動のラブストーリーが実は超絶切ない悲劇だった!【必見】
公開中の映画「青春18×2 君へと続く道」を鑑賞。
主演は台湾の俳優「シュー・グァンハン」と日本の俳優「清原果耶」。
監督は「新聞記者」・「余命10年」・「最後まで行く」の藤井道人。
藤井監督は弱冠37歳。
若い。
本作の製作国は日本と台湾となっているが、原作は台湾出身のジミー・ライによる紀行エッセイ『青春18×2 日本慢車流浪記』。
エグゼクティブプロデューサーを務めた台湾の俳優のチャン・チェンが映画化を企画し、藤井監督に依頼したとのこと。
どうやら藤井監督の祖父は台湾の方で、藤井監督は以前から台湾での映画製作を熱望していたとのこと。
本作のCM動画を見ると18歳の男女の恋物語にしか見えない。
はっきり言ってCMを観る限りでは面白くなさそう。
ところが実際はラブストーリーどころか、恋を始められなかった超絶切ない悲劇であり、その悲劇を乗り越えるためのロードムービーであった。
清原果耶が演じるアミの、あるセリフにより、観客は本作が悲劇であることを予感し、徐々に予感が確信に変わっていくにつれ、全てのセリフが切なくて、苦しいものとなり、後半は涙なしで観ることは不可能。
悲劇・悲恋の物語であるものの、ラストは清々しく、ゴールデンウィーク中のデートムービーにぴったり。
デートで本作を観て、相手が泣かなかったらサイコパスの可能性があるので、その人とは別れましょう。
それくらい普通の人は号泣必至の映画であった。
本作の超粗々のネタバレあらすじは次のとおり。
<粗々ネタバレあらすじ>
36歳のジミー(シュー・グァンハン)は、自分が台湾で作ったゲーム会社を解雇される。
全てを失ったジミーは日本で一人旅を始める。
日本はジミーが18歳のころに愛した日本人女性「アミ(清原果耶)」が生まれ育った国。
ジミーは日本各地を電車で回りながらアミの故郷を目指す。
ジミーは大学生になる直前、日本人が経営するカラオケ屋でアルバイトをしていた。
その店に一人旅をしていたアミが現れ、雇って欲しいと依頼する。
同じ日本人として社長はアミの申し出を快諾。
そしてジミーはアミに一目ぼれ。
美人の日本人女性ということで、ジミーが働くカラオケ屋は大繁盛。
カラオケ屋で働く店員たちもアミと直ぐに仲良くなっていく。
しかし、ある日突然、アミは日本に帰ると言い出す。
納得のいかないジミーだったが、最後に勇気を出してアミをランタンを飛ばすイベントに誘い、思い切ってアミの手を握る。
そこで、お互い夢を追い続けようと約束して、二人は抱きしめあう。
アミが帰国後、ジミーはゲーム作りを始め、仲間とともに1本のゲームを完成させる。
一息ついたジミーはアミに電話し、アミに会いに日本に行きたいと告げる。
しかし、アミは彼氏と地球の裏側へ旅を始めるから日本にはいないと言って電話を切ってしまう。
実はアミは旅をするどころか重い心臓病にかかっており、余命いくばくもない状態だった。
アミは死に、それを知ったジミーはゲームの製作に没頭し、設立したゲーム会社は大きくなっていった。
しかし、ジミーのゲームにかける情熱は大きくなり過ぎ、ジミーの周辺から人が離れ始め、遂に解雇されるに至る。
ジミーの日本での一人旅はアミに会いに行ったのではなく、アミへの思いに決着をつけるためであった。
ジミーは大好きだった日本の漫画「スラムダンク」の聖地である鎌倉を観光し、その後、アミと一緒に観た岩井俊二監督映画「love letter」に出てくる雪景色を見るために長野に行き、その後、新潟で開催されたランタンのイベントを観てアミのことを思い出す。
その旅の途中、幾人かの優しい日本人と交流し、その人々を通してジミーは自分の人生を見つめなおしていく。
そして最後にジミーは福島のアミの実家を訪ねる。
ジミーのことを聞いていたアミの母親が向かい入れ、ジミーはアミの部屋に入る。
アミの部屋にはアミが台湾で描いた絵日記があり、そこにはジミーとの再会を願う文字があった。
号泣するジミー。
アミへ思いに決着をつけたジミーは台湾に戻り、清々しい顔で再出発を始めるのだった。
<ネタバレここまで>
ジミーを演じたシュー・グァンハンは18歳と36歳のジミーを演じ分けたわけだが、特に違和感はなかった。
違和感を感じないのはシューのルックスの良さ。
男が見てもかっこいいし美しい。
シューの芝居も素晴らしく、切ない男の恋心を見事に演じていたと思う。
また、本当は苦しいのに、その苦しさを見せずに、気丈に振る舞うアミを演じた清原果耶の演技もいい。
劇中、アミがジミーとのデートで「人生は長いとは限らない」というセリフをいい、そこで何故アミが一人旅を始めたのかがそれとなく伝わる。
死にゆく自分の人生に愛する人を巻き込むわけにはいかない。
だからアミは愛するジミーとの距離を縮めない。
そこが切なくて、悲しくて、涙が止まらない。
別れることも愛の一つの形だと実感させられた。
この映画を観ていて3つの映画が頭に浮かんだ。
「パスト ライブス/再開」、「四月になれば彼女は」、「レナードの朝」。
「パスト ライブス/再開」も若き日に思いを伝えられずに一人の女性を思い続けた男の物語。
やはり「片思い」の思い出は忘れられないもの。
私もそうだし。
「パスト ライブス/再開」を観たときも思い出した映画が「四月になれば彼女は」。
「四月になれば彼女は」では「愛を終わらせない方法」が一つのテーマとなっており、その方法とは「愛を手に入れないこと」であった。
「青春18×2 君へと続く道」でも、ジミーはアミの愛を手に入れられなかったからこそ、18年間も思い続けたのだろう。
それと「レナードの朝」。
レナードは子供の頃に奇病にかかって、体が全く動かなくなり、口も聞けないまま大人になったところで、一時的に回復して恋に落ちるも再び元の状態になっていく。
体が動かなくなっていくレナードが恋する人に別れを告げるシーンは、何度見ても泣ける。
愛するが故の別れの選択はアミもレナードも同じなわけだが、切なすぎる・・・。
本作では「長い旅をするためには一休みも必要」という主旨のセリフが何度か出てくる。
そのため、映画を観た多くの人が一人旅をしたくなるのではないだろうか。
一人旅をして、誰しもが持つ、心の奥底にある「しこり」を解消したいと思うだろう。
私も過去の「しこり」を抱えて生きている。
2017年12月24日の有馬記念。
なぜ私はあのときキタサンブラックに賭けなかったのか。
あの時に置いてきた気持ちを解消するため、いつか私も中山競馬場まで一人旅をすることにしよう・・・。