映画『セプテンバー5』ネタバレ感想|ミュンヘン事件をテレビ局視点で描く衝撃作

映画「セプテンバー5」を公開から3日目に鑑賞。
本作は、1972年9月5日、ドイツのミュンヘンオリンピック中に発生したテロ事件を題材にした作品。

パレスチナ武装組織「黒い九月」のテロリスト8人が選手村を襲撃してイスラエル人2名を殺害、9人を人質にとって宿舎に籠城し、拘束されている仲間の解放を要求。

その要求は叶わず、テロリストは人質を使って海外逃亡を図る。
最終的には銃撃戦となって、人質9人含む選手11人、警察官1人、犯人5人が死亡。

残った3人のテロリストは逮捕されるも、翌月の10月に発生したハイジャック事件により解放される。

この事件を題材にした最も有名な映画は、2005年に公開されたスティーブン・スピルバーグ監督の「ミュンヘン」。

映画「ミュンヘン」は、この事件によるイスラエルの工作員たちの報復の物語だが、「セプテンバー5」は、選手村での事件に限定するとともに徹底的にテレビ局からの視点で描かれている。

たまたま事件のあった選手村付近に放送用の事務所を構えていたアメリカのABC(アメリカン・ブロードキャスティング・カンパニー)が、歴史上初めてテロ事件の生中継を行う。

ABCのスポーツ担当部門は独占スクープとして生中継するも、テロリスト側に外の動きが伝わってしまい、警察の突入作戦は失敗する。

また、テロリストが逃走中に人質が解放されたという裏の取れない情報を視聴率欲しさに流してしまう。

本作「セプテンバー5」は生中継報道をすることに苦悩しながらも、結局は独占スクープにしたい欲に負けて生放送してしまうテレビ局の姿が描かれる。

つまり「セプテンバー5」のテーマはイスラエルとパレスチナの紛争問題ではない。
しかし、どうしても観客は事件に至る歴史的経緯や、パレスチナ問題に思いを巡らしてしまう。

ユダヤ人を大量虐殺したドイツ人がイスラエル人(ユダヤ人)を守るためにテロリストと戦うという皮肉。

そして2025年の今もパレスチナ問題が解決していないという二重の皮肉。

「イエス・キリストを神の子とは認めない」という一点で、ユダヤ人たちは世界中から憎まれ、遂にはホロコースト。

「自分たちが迫害されるのは国を持っていないからだ!」という気持ちは理解できるが、土地を奪われたパレスチナ人の憎しみも分かる。

「パレスチナ」という国があったわけではないので、イスラエルは「合法的に土地を取得した」と考えている。
そして究極的には「パレスチナ人なんていない。」と思っているのだろう。

パレスチナ人からしたら、とんでもない理屈で、イスラエルによる侵略だと考えている。

どちらも一歩も引くことはできない。
残念ながら、パレスチナ問題は私が生きている間に解決することはなさそうだ…。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です