「ショウタイムセブン」ネタバレ感想|衝撃のラスト6分は本当に衝撃か?
映画「ショウタイムセブン」を公開から二日目に鑑賞。
テレビを使って脅迫を始めたテロリストを元人気キャスターが生放送で説得をするという物語。
ほとんどの観客が感じたと思うが、前半はテンポがいいのに、後半がグダグダ。
物語全体の設定も、やや古くさい気がする。
個人的な評価としては「B-」。
主演は阿部寛。
監督と脚本は渡辺一貴(かずたか)。
2013年に韓国で公開された映画「テロ、ライブ」が原作となっている。
超絶簡単なネタバレあらすじは次のとおり。
<ネタバレここから>
ラジオ局に左遷された元人気キャスターの折本眞之輔(おりもとしんのすけ(阿部寛))の番組にテロリストから火力発電所に爆弾を仕掛けたとの電話が入る。
イタズラだと思った折本は「爆発してみろ」と挑発して電話を切ったところ、火力発電所が爆発。
これをテレビ番組のキャスターに返り咲くためのチャンスととらえた折本は、テレビ局の幹部に連絡し、人気ニュース番組「SHOWTIME7」に出演。
折本は再び電話をしてきたテロリストとの交渉を生中継させる。
話を聞くとテロリストの父は6年前の火力発電所の建設中の事故で亡くなったが、それを電力会社も政府ももみ消していた。
そのときの恨みを晴らすべく、テロリストは1億円と電力会社社長若しくは首相の謝罪を求めた。
しかも爆弾は他にもあるといい、スタジオ内及び折本のイヤホンにも仕掛けられていた。
犯人との交渉を続けるうちにテロリストの本当の目的は折本であることが分かっていく。
遂に折本は6年前に起こった不正を告白する。
6年前、折本及びテレビ局幹部は火力発電所での事故を知っていたが、それを報道せず、その見返りとして折本は「SHOWTIME7」のメインキャスターになったのであった。
折本の告白によりテロリストは警察に投降。
連行されるテロリストに対して、折本は本事件の生中継は大興奮の楽しい時間だったと告げる。
それを聞いたテロリストは爆弾のリモコンスイッチを持った警官に体当たりし、リモコンは床を滑る。
リモコンを拾った折本は、カメラを通じて視聴者に、自分が生きるべきか、死ぬべきかのアンケート調査を行う。
結果が出た瞬間、折本はリモコンのスイッチを押すのだった。
<ネタバレここまで>
折本の最後の告白のとおり、メディアは事件・事故をSHOWとして作り、視聴者はSHOWとして消費している側面は確実にある。
最近で言えば、一連の兵庫県知事の件や、新型コロナのときも無駄に恐怖を煽ってみたりと真実の公正公平な報道からはほど遠く、マスメディアは常に浅薄皮相で、軽佻浮薄な集団といって間違いない。
そして民主主義の国家において第三の権力とされているマスディアは、実際は世論を作り出しているという意味で第一の権力。
それにも関わらず、マスメディアは正義の仮面をかぶって「反権力」を気取っている恐ろしさ。
本作は見たくない真実を露わにする素晴らしいテーマを持っている。
しかも、フジテレビの人権を無視した対応が叩かれている中、偶然にもタイムリーな上映開始日となった。
ところが、鑑賞後の感覚がイマイチ。
その理由を3つほど挙げてみたい。
① ラストに衝撃がない
本作のキャッチコピーは「衝撃のラスト6分」とあったが、一体どこが衝撃だったのか不明。
折本の過去の不正の告白を言っているのかな?
折本が最後に爆弾のスイッチを押すところかな?
折本が清廉潔白なキャラクター造形をしていれば、ラストに衝撃を感じるかもしれないが、折本は映画の冒頭からテロを利用して返り咲こうとしている悪意丸出しの人物として描かれているので、過去に不正をしていたとしても、そこに驚きはない。
「実は折本も共犯だった」くらいまでいけば衝撃だったかも。
これもベタか。
②伏線がまるわかり
映画の前半で折本が社内の清掃員とぶつかり、眼鏡を落とすシーンがある。
観客全員が「これ伏線だな。」と思ったはず。
そして映画の途中で平田満が演じる城先生が現れる。
ほとんどの人が、「さっきぶつかった清掃員だな。」と思ったはずである。
そこには「こいつはテロリストとグルかな。」と思っているのと同じ。
だからこそ、城先生の爆死が嘘であったことに衝撃を感じない。
伏線というは「あれは伏線だったんだ!」と伏線であったことを後で感じさせないとダメ。
③随所に見るリアリティの無さと古くささ
一体、いつ、どうやって爆弾を仕掛けたの?
そこには目をつぶろう。
しかし、大企業と政府とテレビ局がグルになって事故をもみ消すところは無理。
人が死んだ事故を隠せるわけないし、隠すデメリットの方が大きいとしか思えず、結果としてリアリティが下がるだけ。
しかも、政府と大企業が悪者なんて、設定が古くさい。
更に本作はマスメディアの報道の闇を描いているのに、政府まで悪者に回ると、せっかくのテーマとメッセージが薄まってしまう。
とにかく、前半のテンポが素晴らしく、展開が早くて観客を映画の世界に引きずり込んでいるのに、後半になるに連れて展開に驚きが少なくなっていく、尻つぼみな作品だった。
阿部寛の芝居が上手いか下手かは私には分からないが、見応えがあるのは間違いない。
映画としては勧められないが、阿部寛ファンは必見なので、ご鑑賞あれ。