漫画「特攻の島」 あらすじと感想 回天の島を訪ねて 特攻隊員の死の意味

太平洋戦争中に日本が開発した武器に「回天(かいてん)」という特攻兵器がある。
爆薬を積んだ一人乗りの超小型潜水艦。
つまり人間魚雷

一度発射されると、成功の有無に関わらず生きて帰還することは無い。
生還率ゼロパーセントの巨大な鉄の棺桶

特攻の島1

この兵器の誕生から終焉までを描いた傑作漫画が「特攻の島」。
作者は「海猿」「ブラックジャック」などで有名な佐藤秀峰
圧倒的な画力で描かれる戦闘シーンもさることながら、回天に乗り込む隊員達の心理描写に胸打たれる。

Story

福岡海軍航空隊の海軍飛行予科練習生である渡辺は特攻兵器に志願する。
当初、渡辺は、あまりに命中精度の低い回天に疑問を持つ。

これでは犬死ではないか。
この疑問を回天の発案者の一人である仁科中尉に何度もぶつける。

特攻の島2

しかし、その仁科中尉自身が回天に乗り込み戦死する。
渡辺も戦地で回天に乗り込むも、故障により出撃できず。

一方、渡辺の親友である関口の回天は発射され、渡辺が乗り込んでいる潜水艦を助けるため、囮となって戦死する。
絶望する渡辺。

特攻の島3

基地に帰港すると渡辺は卑怯者呼ばわり。
その後、何度も渡辺は特攻を志願するも、回天の指導官にされてしまう。

苦悩する日々が続く渡辺だったが、自分は死に逃げたいだけで、生きねばならぬと決意を固める。
ところが、空襲により渡辺の家族は全員死亡してしまう。
戦う意味を失った渡辺であったが、戦争の末期に再度回天に乗り込む命令が下る。

 

特攻隊員の死の意味

戦争当時、何故、多くの若者が、この必死の兵器に志願したのか。
恐らくは天皇を神・絶対者として崇めさせ、日本を一つの大きな宗教国家にしたてあげたところが大きいと思われる。

神のために死ぬのだから、そこには大きな意味がある。

しかし、実際は、時代の大きな流れの中に選択の余地なく巻き込まれたというのが本当のところだろう。
自ら志願したといっても、その苦悩は計り知れない。
自分の死は本当に意味があるのか

そんな苦悩が解ける間もなく、次々と死んでいく戦友と国民。
そんな状況では自分の死の意味などは過ぎ去り、あるのは生き残ったことの辛さだけ。

もう戦争の勝ち負け、尊皇の精神などはどうでもよく、ただひたすらに敵国への殺意があるのみ
敵国へ一撃だけでも喰らわせられるのであれば、自分の命などいらない。

この漫画において、主人公の渡辺は見事に回天を敵艦に命中させ戦果を挙げるが、最後の言葉は「殺してやる!殺してやる!…俺を殺してくれ!」。

特攻の島4

このセリフのシーンに当時の特攻隊員の思いの真実が描かれていると思う。

特攻隊員の多くは遺書を残している。
渡辺の場合、家族がいなくなったので、本土基地隊あてのメモ書きが残される。
「どうか生きて帰った者(回天搭乗員)を温かく迎えてやってください。」
渡辺自身の卑怯者呼ばわりされた経験からの伝言であった。
もうこのシーンは涙無しでは読むことができない。

彼らの死はムダだったのだろうか。
もちろんその答えは残された日本人である我々にかかっている。
そしてその答えは未だ出ていないとしなければならない。
死んでいった英霊の皆様に恥ずかしくない日本にしていかなければならない。
しかし、今の日本は…。

 

回天記念館

山口県周南市大津島に旧回天搭乗訓練員の宿舎跡に立てられた記念館がある。
折角「特攻の島」を読了したので、この記念館に行ってみることにした。
徳山港からフェリーに乗って約40分。

特攻の島5

入館料は310円と安い。
その分、展示スペースも小さい。

中に入ると、回天の考案者で、「特攻の島」にも出てきた黒木海軍大尉、仁科中尉の遺影や、直筆の手紙などが展示してあった。

もちろん、その他の特攻隊員の遺書も多数読むことできる。
ほとんどの隊員が二十歳前後であったせいか、遺書は両親にあてられたものが多いようだった。

その中に幼き弟あてに書かれた手紙があり、弟が読めるように全てカタカナで書かれていた。
撮影が禁止されていたため、正確ではないが、概要は次のとおり。

「文昭へ
兄さんは、これからアメリカをやっつけにいきます。
兄さんのかたきは文昭がとってください。
文昭は、家族の言うことを聞いて、よく運動して、よく勉強していい子になってください。
そして兄さんの分まで親孝行してください。
それが兄さんのかたきを討つことになるのです。
このことは文昭が大きくなったら分かります。
もう会うことはないけれど、兄さんはいつも文昭を見ているので寂しく思わないでください。
さようなら。
兄さんより」

親孝行することが仇討ち
この一文を読んで涙が止まらなかった。

この兄が本当にやりたかったことは敵艦を沈めることではなかったのだ。
本当にやりたかったことを弟に託したのだ。

自分自身で直接親孝行したかっただろうに。
特攻隊員になんかなりたくなかっただろうに。
もっと生きたかっただろうに…。

先日、ネットニュースで、元特攻隊員だった方のインタビュー記事があった。
その方によると、特攻隊員のほとんどは本心で志願したのではなく、実際は同調圧力であり、また、戦争に負けたときも、表面では悔しそうにしていても、本当はうれしくてたまらなかったと告白している。

戦争当時、日本中はやせ我慢していたんだ。
敗戦後、天皇陛下が人間宣言をされたが、皆本当は知っていたんだ。神様じゃないって。

小説家の三島由紀夫の作品「英霊の声」で、死んでいった特攻隊員の魂が「などてすめろぎは人間となりたまひし(なぜ天皇陛下は人間になってしまわれたのか)」というセリフがある。

しかし、本当のところは、「陛下、正直におっしゃってくれてありがとう。」と思っているのではないだろうか。

もちろん英霊たちが今の日本を見たら、自分の国を自分で守ることを放棄し、しかも敵国であるアメリカに守ってもらっていることに憤りを感じるとは思う。

しかし、平和に対する思いは、戦中も戦後も大して変わっていないのではないだろうか。
大っぴらに平和を言えたかどうかの違い。
大きな違いではあるが。

記念館を出た後、回天の訓練場にも行ってみる。
戦争当時、回天の整備工場は港にあったらしく、港からトロッコ鉄路を敷いて回天を訓練場まで運んでいたらしい。

その鉄路を通すためのトンネルは今も存在し、そこを抜けると訓練場。
ここでの訓練で回天の考案者である黒木大尉は殉職している。

特攻の島6

特攻の島7

特攻兵器の構想は神風で有名な航空機より回天の方が早く、後に他の兵器に採用されていったらしい。
責めるわけではないが、黒木大尉はとんでもない兵器を作ってしまった。
黒木大尉が提案しなくても、いずれ誰かが言い出したのだろうけど。

とにかくも、今生きている我々が死んでいった特攻隊員に恥ずかしくない日本にしていかなければならない。

ちなみに、「特攻の島」は全9巻で漫画としては比較的短め。
アマゾンのkindle unlimitedで全巻読める。
是非一読を。

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