映画『私にふさわしいホテル』感想&原作との違い5選【ネタバレ注意】

映画「私にふさわしいホテル」を公開から二日目に鑑賞。
本作は柚木麻子氏の同名の小説が原作。

監督は堤幸彦。
配給は日活&KDDI。

主演は「のん」。
中堅出版社の新人賞を受賞した小説家「中島加代子」の成り上がりの物語。
不公平で理不尽な社会への復讐劇でもあったりする。

鑑賞前に原作小説を読んだのだが、原作の世界観は再現されていたと思う。
もちろん原作に忠実ではなく、改変も複数あり、いくつか省略されていた。
特にオチというか、ラストがかなり違っていた。

野心的で、行動力のある中島加代子のキャラクターからすると「のん」の起用は正解だったと思うが、個人的には女性芸人の方がよかった気もする。

例えば柳原可奈子とか。
ただ、興行収入を考えると「のん」でよかったのかもしれない。

原作も映画も「面白い!」言いきれる。
個人的な評価としては「B+」。

何気にお正月映画の中で一番おすすめかも。
公開規模は小さいが、もう少し広げても客は入る気がする。

せっかく原作小説を読んだので、原作と映画版との違いを5つほど挙げておく。
なお、映画だけでなく、小説のネタバレもあるので注意。

①設定年

映画では何故か年代設定が1980年代となっていた。
東京の神保町に現存する「山の上ホテル」を舞台にしているが、このクラシックなホテルの雰囲気に合わせて80年代のルックにしたかったのだと思う。

原作小説は現代が舞台となっている。

そのため中島がペンネームを有森樹李とした後の2作目の小説のタイトルが違う。
原作小説では「おばあちゃんをリツイート」。
映画では「おばあちゃんをリクルート」。

②中島加代子(ペンネーム「相田大樹」時代)の売れない理由

映画では新人賞を受賞した作品を大御所小説家の東十条宗典が酷評したことにより、相田大樹は売れなくなる。

原作では元アイドルの「島田かれん」も新人賞を獲得し、マスコミは「島田かれん」にばかり注目したことが原因。

③中島加代子の体型

小説での中島加代子は小太りという設定。
なお、一度だけ相田大樹から有森樹李にペンネームを変えて別人になりすましたときだけ、ダイエットしている。

④中島の東十条家への潜入理由

映画の後半で中島は鮫島賞の獲得のために東十条の愛人に送った着物を着て東十条家に乗り込み、その日のうちに東十条が開き直って中島が着物を使って脅迫していることを暴露するが、原作での中島は何泊も泊まり、冷え切っていた東十条家の家族仲を回復させ、東十条に初期の作品のような純粋さを取り戻してもらうためだった。

⑤「島田かれん」への復讐

映画のラストは鮫島賞を受賞になっているが、原作小説のラストは9年後に中島こと有森樹李による「島田かれん」への復讐が描かれる。

前述したとおり原作では中島と一緒に新人賞を獲得した「島田かれん」という元アイドルが登場する。

「島田かれん」の新人賞は裏で事務所が動いていたインチキであった。
そのことを知っていた有森樹李こと中島は、芸能人として落ちぶれてしまった島田を「山の上ホテル」に呼び出し、有森樹李の小説を原作とした映画のオーディションを行う。

中島が仕掛けたオーディションは、同じホテルに泊まって執筆中の東十条の原稿を落とさせること。

つまり、中島が新人の頃にやったことを島田にやらせる。
機転の利かない島田は、中島のようなことはできず、色仕掛けで東十条に迫っていく。

その現場を島田の愛人である所属事務所の社長に見せ、島田はどん底に突き落とされる。
しかし、そのどん底で言った本音を認め、オーディションは合格となる。

ちなみに、このときの東十条は編集の遠藤(映画では田中圭が演じた。)が変装してなりすましていた。

島田が出演した映画は大ヒットしてカンヌで上映されることになる。

しかし、島田が勝手に主役と思い込んでいた役は主役ではなかった。
かつて中島加代子が新人賞獲得のときに味わった悔しい思いを、今度は島田が味わうこととなる。

復讐を果たした中島だったが、気分は晴れない。
そこに何故か東十条が現れて励ます。

ライバルだった二人の間に奇妙な友情が生まれ、まるで格闘技のようなダンスを踊るところで原作小説は終わる。

他にも原作との違いはあるが、主なところは以上。

本作のテーマは、才能と努力があっても、なかなか認められない社会への怒り。
そうであるならば、自らの力でスポットライトの前に出ていかなけれなならないという力強いメッセージを感じる。

映画を面白く感じた人は、是非、原作の方も読んで欲しい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です