映画『ブルーボーイ事件』レビュー|日本が30年間止めた「性別適合手術」の真実
今日は休みを取って鹿児島から熊本に行く。
目的は、現在、映画界で話題のインディーズ映画「ブルーボーイ事件」を鑑賞するため。
正直に言って、今年観た映画の中でも屈指の一本だった。
往復1万5千円の新幹線代を払った甲斐があった。
何故こんなに面白い映画を鹿児島では上映しないのか理解し難い。
本作は1964年に実際に起こった「ブルーボーイ事件」をモチーフとしている。
「ブルーボーイ」とは、性別適合手術(当時は性転換手術と呼ばれた)を受けた人を指す。
当時、東京オリンピックの開催に備えた街の浄化運動の一環として、警察はブルーボーイを売春防止法で取り締まりにかかった。
しかし、同法は女子が対象であった。
そのため、警察は矛先を性別適合手術を行った産婦人科医師に向ける。
性別適合手術を行った一人の産婦人科医を警察は優生保護法(現在の母体保護法)違反で逮捕する。
当時の優生保護法では「故なく生殖を不能にすることを目的として手術又はレントゲン照射を行ってはならない」となっていた。
医師側の弁護士は精神の治療のための手術であり、違法ではないと主張。
そのための証人としてブルーボーイを裁判に招く。
しかし、そのブルーボーイは「どうして私たちが精神異常者扱いされなくちゃならないのよ!誰か答えてよ!誰か答えてよ!」と泣きながら訴える。
その迫力と切実さが観客にもビンビンに伝わってきて、思わず私も泣いてしまった。
結局裁判は1969年に有罪判決を受けてしまう。
そしてこの判決を受けて、日本国内での性別適合手術は約30年間に渡り中断される。
その界隈の人々にとってブルーボーイ事件は、負のエポックな出来事となった。
恐らく映画に登場する各人物の設定は架空であると思われるが、十分なリアリティがあり、心動かされた。
これだけの切迫感のある映画が作れた要因は、監督の飯塚花笑(いいづかかしょう)自身がトランスジェンダーであることが大きいだろう。(飯塚監督は女生として産まれた男性)
ちなみに映画内でブルーボーイたちが、「サン・トワ・マミー」を口ずさむシーンがある。
「サン・トワ・マミー」は、裁判当時に越路 吹雪が歌った大ヒット曲。
越路 吹雪はトランスジェンダーではないが、宝塚で男役として有名になった人。
つまり「サン・トワ・マミー」は、本作を暗示していて面白い。
思わず帰りの電車の中で聞いてしまった。
「二人の恋は終わったのね・・・」
いい曲だ。
誰一人有名なスターは出演していない映画「ブルーボーイ事件」。
しかし、どの映画サイトでも4点以上の高得点を獲得している。
これはモチーフがよかっただけでなく、映画としての仕上がりも素晴らしいものであることを意味していると思う。
極端に上映している映画館は少ないが、是非、トランスジェンダーの方の苦しみを理解すべく、多くの方にご覧いただきたい。