第49回日本アカデミー賞とキネマ旬報ベストテンを比較!作品賞は『国宝』と『旅と日々』で分かれた理由

令和8年3月13日に第49回日本アカデミー賞授賞式が行われ、各部門の最優秀賞が発表された。

今回は世界最古級の映画賞とされる第99回キネマ旬報ベストテンと結果を比較したい。

前提として、それぞれの選考方法を確認する。

日本アカデミー賞は1月に優秀賞が発表され、3月に優秀賞の中から「最」優秀賞が発表される。

優秀賞、最優秀賞ともに約4千人の日本アカデミー会員の投票で決める。

アカデミー会員は「現在も含め映画事業に継続して3年以上従事し、当協会で定めた運営・実行委員、または賛助法人の推薦を受けた者とする。」となっている。

つまり映画評論家は投票できず、映画制作関係者だけで決めるのがアカデミー賞。
選考する人が4千人と多いことからか、やや大衆の感覚に近い作品が選ばれる傾向にある。

一方、キネマ旬報ベストテンは主に映画評論家で構成される選考委員の投票によって決まる。
今回の選考委員は64名。

各委員の第1位を10点。
第2位を9点、以下10位を1点として集計してベストテンが決まっていく。

日本アカデミー賞の「最優秀」とキネマ旬報ベストテンの「1位」は次のとおり。

【脚本賞】

日本アカデミー賞:奥寺佐渡子(「国宝」)
キネマ旬報:奥寺佐渡子(「国宝」)

どちらも国宝の奥寺佐渡子。
ちなみに奥寺氏は、かつて細田守のアニメ作品の脚本も担当されてヒットしている。

細田守といえば昨年「果てしなきスカーレット」で大コケ。
奥寺氏との再タッグが期待される。

【監督賞】

日本アカデミー賞:李相日「国宝」
キネマ旬報:李相日「国宝」

順当。
言うことなし。

撮影、演出、照明、編集、音楽等、映画を構成するあらゆるものを高い次元で李監督が結実させていた。

「国宝」は実写邦画で興行収入歴代ナンバーワンとなった。
今後10年は抜けない記録となるだろう。

【助演女優賞】

日本アカデミー賞:森田望智(「ナイトフラワー」)
キネマ旬報:伊東蒼(「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」)

「ナイトフラワー」で森田はプロ女子格闘家を演じたが、試合のシーンでは本物のプロと見間違うくらいの動きを見せていた。

あの動きに誰もが森田の女優としてのプロ根性を観た。
納得の受賞。

一方、「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」での伊東蒼は、失恋する女の切ない気持ちを超がつくほどの長セリフにより観客の涙を誘った。

特に私は原作小説を映画の前に読んでいて、その先の悲劇を知っていただけに、号泣してしまった。

こちらも納得の受賞。

ちなみにキネマ旬報ベストテンにおける助演女優賞の2位は森田望智。
逆に日本アカデミー賞において伊東蒼はノミネート(正確には「優秀賞」)にも名前がない。

「ナイトフラワー」の配給は松竹。
「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」の配給は日活。

メジャーと準メジャーの差が日本アカデミー賞では投票数として出てしまったのかもしれない。

【助演男優賞】

日本アカデミー賞:佐藤二朗(「爆弾」)
キネマ旬報:佐藤二朗(「爆弾」)

こちらは予想どおり。

私は佐藤二朗の過剰な芝居が好きではない。
でも「爆弾」で佐藤二朗が演じたスズキタゴサクはハマり役だったことは認める。

【主演女優賞】

日本アカデミー賞:倍賞千恵子(「TOKYOタクシー」)
キネマ旬報:シム・ウンギョン(「旅と日々」)

日本アカデミー賞の方は、体当たりの芝居で観客を魅了した「ナイトフラワー」の北川景子が最優秀賞を獲得するかもと思っていた。

もちろん最有力予想は倍賞千恵子。

倍賞はタクシーを使い東京の柴又を離れて神奈川県の葉山にある高齢者施設に向かう「高野すみれ」を演じた。

高野の人生が、倍賞千恵子自身の人生に重なり、まるで倍賞千恵子の集大成のような作品であった。

「旅と日々」のシム・ウンギョンも素晴らしかったが、三宅昌監督の力も大きいように思う。

【主演男優賞】

日本アカデミー賞:吉沢亮(「国宝」)
キネマ旬報:吉沢亮(「国宝」)

どちらも順当に国宝の吉沢亮が獲得。

ちなみにキネマ旬報ベストテン主演男優賞の2位は「敵」の長塚京三。
「敵」の長塚京三の方がキネマ旬報っぽいかな。

【作品賞】

日本アカデミー賞:「国宝」
キネマ旬報:「旅と日々」

キネマ旬報ベストテンは映画ファン(マニア?)向けの作品が選ばれる傾向にある。

それでも「国宝」が選ばれるだろうと思っていたところ、なんと第99回キネマ旬報ベスト10作品賞の1位は「旅と日々」。

三宅昌監督の「旅と日々」は、いわゆる単館系作品で、ご覧になっていない方も多いかと思うが、素晴らしい作品。

特に映画の後半に出てくる宿の主人「べん造」が最高。
この「べん造」を堤真一が演じたが、私の中での主演男優賞は堤真一。

とにかく日本アカデミー賞とキネマ旬報ベストテンで作品賞に違いが出たのは喜ばしいこと。
選ぶ人と選び方が違えば、違う作品が選ばれるということ。

「国宝」も「旅と日々」も、どちらも素晴らしい作品なので、観ていない方は是非ご覧あれ。

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