【ネタバレあり】映画『国宝』感想|3時間が一瞬に感じた傑作!涙必至の名シーン3選も紹介

間違いなく今年を代表する映画と言っていい「国宝」を公開から二日目に鑑賞。
CM動画を見る限り面白くなさそうだし、上映時間は3時間と長いし、鑑賞するのに腰が引けていた。

ところがどっこい、メチャクチャ映画の世界に引きずり込まれた。
全編に渡って重厚で緊張感の溢れる映像が映し出され、3時間に渡って画面に釘付けになった。

なんというか、冒頭から最後まで「ノーミス」といった感じ。
脚本、演出、芝居、美術、撮影、照明などなど、映画を構成するそれぞれ全てが、卓越した成果として結実している。

私は地方の駅から遠い映画館で鑑賞したのだが、満席に近い状態。
いつもの私であれば、前から3列目くらいの席で映画を鑑賞するのだが、前方も客が多くはいっていたため、今回は後方の席で鑑賞。

当然、後方だと画面が小さくなるわけだが、気が付くと映画の世界に引きずり込まれていて、画面が大きく感じる。

そして何度も心動かされて訳の分からん涙が溢れてくる。

今のところ、年明けの賞レースでは、「国宝」が総なめしそうな予感。

本作はヤクザを父に持つ少年「立花喜久雄」が歌舞伎界で国宝になるまでを描く物語。

この立花喜久雄の少年時代を黒川想矢、青年期から老年期を吉沢亮が演じる。

喜久雄は女形として名を馳せていくが、黒川想矢も、吉沢亮も、中性的な美しい顔立ちで、役にぴったりであったと思う。

キャストも豪華。

生涯のライバルで親友でもある「俊介」を横浜流星が演じる(少年期の俊介は越山敬達)。

そして複数の重要なシーンで人間国宝「万菊」を演じた田中泯は相変わらずの存在感。
田中泯は、どんな役をやらせても、ずっと観ていたい役者の一人。

その他も渡辺謙、高畑充希、寺島しのぶ、森七奈、見上愛、永瀬正敏、中村鴈治郎等の演技派の俳優が多数出演。

キャストだけでも見応えたっぷり。
さすが東宝映画といったところ。

監督は李 相日(リ・サンイル / り そうじつ)。
李監督は『フラガール』『悪人』『怒り』『流浪の月』などの名作を作ってきた。
ちなみに新潟県出身の在日朝鮮人三世。
吉田修一の同名の小説が原作。
『朝日新聞』に2017年1月1日から2018年5月29日にかけて連載されたものを加筆して『国宝 上 青春篇』『国宝 下 花道篇』の二部構成で出版されている。

残念ながら原作は未読であるが、個人的に映画版のクライマックスは次の三つ。

一つ目は、喜久雄が初めての大舞台で近松門左衛門の『曽根崎心中』(そねざきしんじゅう)の「お初」を演じるところ。

喜久雄の師匠である花井半二郎(渡辺謙)が交通事故に遭い、代役として喜久雄が「お初」を演じることになるわけだが、本来であれば代々歌舞伎役者の血筋を持つ、半二郎の息子「俊介」(横浜流星)が務めるところ、半二郎は芸に勝る喜久雄を代役に指名する。

「血統」という後ろ盾がなく、震えが止まらない喜久雄。

悔しくてたまらないのに、それを抑えて喜久雄を励まし、喜久雄の芝居に嫉妬と感動と自分自身への不甲斐なさで涙を流す俊介。

少ないセリフで、二人の微妙な感情が画面から溢れて伝わり、私の心も苦しくなって涙が溢れだす。

二つ目は、糖尿病で片足を失った俊介が『曽根崎心中』の「お初」を演じるシーン。
喜久雄は「お初」の心中相手である徳兵衛を演じる。

歌舞伎という過酷な世界に身を投じて心中した喜久雄と俊介の二人の人生が「お初」と「徳兵衛」に自然と重なっていき、観ている方は切なくて切なくて胸が苦しくなっていく。

三つ目は、喜久雄の愛人の娘がカメラマンとなって父の前に現れるシーン。

喜久雄の娘は「私はあなたを父と思ったことはない。しかし、舞台を観ると幸せな気持ちになって、拍手をせざるを得なかった。」という趣旨のセリフを喜久雄に告げる。

単純なセリフであるが、これが胸に響く。

これは映画内で随所に出てくる舞台での歌舞伎のシーンのレベルが、本物の歌舞伎役者と同レベルなのではないかと思えるくらいに高いものであったことが背景にあり、これが喜久雄の娘の最後のセリフに説得力を与えていたと思う。

もちろん、上記三つ以外も見どころ多数。

冒頭書いたとおり、本作「国宝」は間違いなく令和7年を代表する作品の一つ。
是非、映画館で鑑賞して、3時間たっぷり映画の世界の中に引きずり込まれて欲しい。

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