『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』感想&ネタバレ解説|映画と原作小説の違い5選!
大九明子監督が手掛ける、切なさに満ちた青春映画
今週から公開の映画「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」を鑑賞。
監督・脚本は大九明子(おおくあきこ)。
大九監督の作品は、のん主演で2020年公開の「私をくいとめて」を鑑賞している。
「私をくいとめて」も、脚本を大九監督が担当し、なかなかに作家性が強かった記憶がある。
主演は萩原利久(はぎわらりく)。
ただし、観た人によっては、河合優実とのW主演。
若しくは河合優実と伊東蒼のトリプル主演と感じる人もいるだろう。
お笑いコンビ「ジャルジャル」の福徳秀介が書いた同名の小説が原作。
原作小説は萩原利久が演じた「小西」の一人称形式になっていて、確かに物語上は萩原利久が単独主演で間違いない。
今回も映画鑑賞直前に原作小説を読了。
若者ラブストーリーに見せかけた「生と死」の物語
本作のポスター・チラシの写真を見ると、若者のラブストーリーを予想させる。
ラブストーリーはラブストーリーなのだが、実際は誰もが避けられない愛する人との死別の苦しみがメインテーマ。
あらすじは次のとおり。
大学生で校内で友達が山根(黒崎煌代)の一人しかいない主人公の小西徹(藤原利久)。
小西は友達が一人もいないのに胸を張って校内を闊歩し、食堂では堂々と食べる「一人ざる蕎麦女」こと桜田花(河合優実)に恋心を抱く。
そんなころ、小西は深夜に銭湯の清掃のアルバイトをしていた。
同い年の「さっちゃん」(伊東蒼)と二人で清掃。
「さっちゃん」は小西のことが好きであったが、鈍感な小西は、さっちゃんの恋心に全く気付かない。
校内では桜田花と距離を縮めていく小西であったが、ある日、この二人に悲劇が襲うのだった・・・。
【見どころ】長セリフが心に響く
本作の見どころは、小説でも映画でも、小西徹、桜田花、さっちゃんの3人の「長セリフ」。
特に原作小説を先に読んでしまった私にとって、伊東蒼が演じる「さっちゃん」の小西への告白は涙腺崩壊だった。
なお、広告にあるコピーに「生きる痛みを知ったとき、本当の恋が始まる。」とあるが、映画の内容からすると「生きる痛みを知ったとき、人は大人になっていく。」の方が正解かも。
宣伝を見ると、どうも送り手側は悲劇であることを隠したいらしい。
しかし、実際は小説も映画も、後半は涙が止まらないほどの切ない物語となっている。
配給は準メジャー会社の日活であるが、映画の作りあがりは、ややミニシアター系。
普段映画を観ない人も、映画ファンも、どちらも納得。
年明けの賞レースに絡みそうな作品。
特に「さっちゃん」役の伊東蒼は、いずれかの助演女優賞は間違いないと思う。
個人的な評価としては「Aー」。
【ネタバレ】映画版と原作小説の違い5選
以下、ネタバレを含みつつ、原作小説と映画の違いを5つ挙げてみたい。
①小西徹の出身地
映画版の小西は大好きだった祖母が死に、落ち込んで休学していたところ、映画の冒頭で復学し、「横浜から帰ってきたのね。」というセリフがあり、関西弁を使っていないところからすると関東出身のように描かれている。
一方、原作小説の小西は休学していたという場面はなく、その分、祖母とのエピソードが多く語られ、また、関西弁を使い、地元の大学に通っているような設定となっている。
②「さっちゃん」の銭湯での転倒
映画の「さっちゃん」は、小西に好きな女性ができたことを知って落ち込み、アルバイト先の銭湯で転倒して溺れたフリをする。
原作小説では、このようなシーンはなく、逆に小西が転倒して、さっちゃんが必要以上に慌てふためき、いかに、さっちゃんが小西のことを愛していたかが分かるシーンがある。
③桜田家の父のギター
原作小説でも桜田家の父は桜田花が9歳のときに病死したことになっているが、映画のようにギターを弾くシーンはない。
しかし、この父のギターのシーンは非常に印象的で、観客の心を動かすものだったと感じた。
④銭湯の主人の娘
映画版では銭湯の主人(古田新太)の娘(松本穂香)が妊娠し、赤ん坊を産むが、原作小説では娘自体が出てこない。
この娘役を加えた真意は分からないが、脚本も担当した大九監督としては、人生には死別の悲しみだけではなく、新たな出会いの素晴らしさもあることを描きたかったのかもしれない。
⑤ラストシーン
ラストが映画と原作小説との最大の違い。
映画も、原作小説も、大音量で聞いたスピッツの「初恋クレイジー」が終わったところで、小西が「好きです。」といい、映画版は、ここで終わる。
しかし、原作小説は短いが続きが描かれている。
時は飛んで、小西徹と桜田花の結婚式。
死んだ父が花の結婚式のために書いていた手紙が読まれる。
手紙の内容は、さっちゃん宛に書いた内容と全く同じ。
「同じなんかぁい!」という、ある意味「オチ」的な感じで原作小説は幕を閉じている。
この5つ以外にも多くの細かい違いがある。
映画で感動した方は、是非、小説版も読んで欲しい。