岡本太郎の思想を読み解く|映画『大長編 タローマン 万博大爆発』に見る「でたらめな力」

映画「大長編 タローマン 万博大爆発」を公開初日に鑑賞。
日本を代表する芸術家である岡本太郎の作品や言葉をモチーフとして制作された特撮作品。

あらすじ

大阪万博が開催された1970年が舞台。
そこに3匹の奇獣が現れる。

地球防衛軍(CBG)やヒーロー・水差し男爵が応戦するも歯が立たない。

そこに「でたらめな力」を体現する巨人「タローマン」が登場。
奇獣たちを次々に撃退。

その後、タローマンとCBGは奇獣討伐のため“昭和100年”の2025年へタイムスリップ。

未来社会は“秩序と常識が過剰に重視されたディストピア”と化しており、純粋な「でたらめな力」はほとんど絶滅寸前。

この世界でもタローマンが「でたらめ」を振りかざしつつ、奇獣とのバトルや未来社会との衝突する。

テレビ版「TAROMAN」との関係

タイトルに「大長編」とあるが、これは短編があるため。

『TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇』と題し、NHK教育テレビジョンで2022年7月に全10話で深夜に1話「5分」という形で放送されていたらしい。

テレビ版も、今回の映画版も、藤井亮が脚本と監督を担当。

ネットで調べたところ、テレビ版は「本放送期間:1972年1月18日 – 8月8日、全30話のうち現存しているエピソードを放送した」という架空の設定で放送されている。

そのためテレビ版、映画版ともに、1970年代当時に放映されていた特撮ドラマ(ウルトラマン等)のルックスになっており、画像と音は、あえて劣化させている。

岡本太郎と「奇獣」

本作に出てくる「奇獣」の原作者といえる岡本太郎は、1911年(明治44年)生まれで、 1996年(平成8年)に呼吸不全により84歳で亡くなられた。

昭和生まれの私からすると、岡本太郎といえば「芸術は爆発だ!」。
逆にいうと、これ以外の岡本太郎に関する知識はなかった。

しかし、2年ほど前に、岡本太郎が書いたエッセイ「自分の中に毒を持て」、「今日の芸術」、「自分の運命に楯を突け」を読んだ。

どれもメチャクチャ面白い。
この3つを読めば、岡本太郎の思想がおおよそ分かると思う。

岡本太郎の名言

著書の中から、いくつか岡本太郎の言葉をご紹介したい。

<自分の中に毒を持て>

  • 自分らしくある必要はない。むしろ「人間らしく」生きる道を考えて欲しい。
  • 結果がまずくいこうがいくまいがかわまない。むしろ、まずくいった方が面白いんだと考えて、自分の運命を賭けていけば、いのちがパっとひらくじゃないか。
  • いわゆる機械工業、能率、生産第一、植民地主義、近代社会がいかに誇らしく見せかけていても、人間存在を空しくし、歪曲化してしまったことは確かだ。
  • 絵描きは絵描き、学者は学者、靴屋は靴屋、役人は役人、というように職業の狭い枠の中に入ってしまって、全人間的に生きようとしない、それが現代のむなしさなんだ・・・

<今日の芸術>

  • なるほど人は、社会的生産のため、いろいろな形で毎日働き、何かを作っています。しかし、いったい本当に創っているという、充実したよろこびがあるでしょうか。(中略)それは近代社会が、生産力の拡大とともにますます分化され、社会的生産がかならずしも自分本来の創造のよろこびとは一致しないからです。
  • 芸術はすべての人間が生まれながらにもっている情熱であり、欲求であって、ただそれが幾重にも、厚く目かくしされているだけなのです。(中略)芸術こそ他人事でなく、自分自身の問題であり、生活自体だということがわかってきます。

<自分の運命に楯を突け>

  • 「マイナスをプラスと考えよう」と言ってるんじゃないよ。マイナスこそ、イコール、プラスであると考えているんだ。(中略)だから、いつも言うように、ぼくは絶対に成功しないことを目的にしている。

川崎市岡本太郎美術館を訪れて

私は岡本太郎の言葉に感動し、2年ほど前に神奈川県川崎市にある「川崎市岡本太郎美術館」に行った。

彼は常々「芸術は上手くあってはならない。美しくあってはならない。」と語っていたが、そのとおりに上手くもないし、美しくもない。

しかし、岡本太郎の作品は、彼の有名な言葉「芸術は爆発だ!」のとおり、力強く、素人の私が見ても心に迫ってくるパワーがある。

岡本太郎は、あらゆる現代人は芸術家になれるし、芸術家になる「べき」だと説いていた。
現代は科学の時代であり、合理の時代。

その中で本来、奴隷とすべき機械の奴隷となり、職業は合理化の名のもとに分化が進み、望んでもいない義務付けられた社会生活の中で自発性を失い、ただ生き続けるためだけに働かされている。

その生活の中で抑圧された創造欲を開放すべきだし、その姿こそ「本来の人間」であり、その在り方こそが即芸術なのだと岡本太郎は言う。

別の言い方をすれば、全ての現代人にとって芸術は決して他人事ではないということ。

今回鑑賞した「大長編 タローマン 万博大爆発」に、岡本太郎の思想が上手く反映できていたかの評価は分かれるところかもしれない。

しかし、いずれにしろ、是非、本作を鑑賞するだけでなく、多くの方に岡本太郎の作品と著書に触れて、日本が世界に誇る偉大な芸術家を知っていただきたいと思う。

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