映画「あまろっく」レビュー:ネタバレあり!脚本と江口のりこの演技に注目
今週から公開の映画「あまろっく」を鑑賞。
監督・原案・企画は中村和宏。
脚本は西井史子。
主演は江口のりこ。
ポスター・チラシ上のキャスト表記(ビリング)は中条あやみも主演になっているが、私にとっての主演は江口のりこだった。
恐らく多くの人も私と同じ感覚だったと思う。
江口と中条をW主演の形にしたのは大人の事情ってやつかもしれない。
中条あやみも存在感のある女優だと思うが、本作においては圧倒的に江口のりこの芝居の素晴らしさに観客は引き込まれたと思う。
しかも脚本がいいので、観客は映画の世界に引き込まれて引きずりまわされる。
アクション映画でも、SF映画でもないのに、エンターテイメント性の高い作品であった。
よほどの映画マニアでない限り、鑑賞後の満足度は高いと思う。
本作のCMはコメディ映画という宣伝になっていて、実際にも前半はかなり笑いが絶えないのだが、後半は急展開となりつつ、家族の絆と愛が描かれる。
後半は涙なしでは観れず、私など泣くシーンじゃないのに、ずっと涙がこぼれでてしまった。
ご都合主義ともとれる展開も多いのだが、観ている側としては是非とも都合よく進んで欲しいと願ってしまうほどに脚本が素晴らしい。
父が若い女と再婚したというだけではなく、次々と困難やジレンマが発生し、その中で血のつながらない年上の娘と若い義母が本当の家族になっていく。
なお、タイトルの「あまろっく」は兵庫県尼崎市の海上にある閘門(こうもん)のこと。
この閘門は「尼ロック」と呼ばれ、台風襲来時にロックゲートを閉めて海面が高くなるのを抑えて、街の水害を防止する装置。
英語で閘門はLockGateと書くが、Rock ‘n’ Rollのロックともかけているのかもしれない。
ここからはネタバレを含んだレビューを書くので、映画を鑑賞後に読んでもらいたい。
<素晴らしかった点>
①脚本
脚本が大変素晴らしいと感じた。
主人公で超がつく優秀な優子が、嫌っていたグータラな父のようになってしまうところがなんとも可笑しくて悲しい。
父(笑福亭鶴瓶)が突然に亡くなるという設定も悪くない。
しかもかなり早い段階で亡くなり、観客はかなりビックリ。
そして父の死後、様々な困難が発生し、それを早希(中条あやみ)とともに喧嘩しながら乗り越えていくうちに、血のつながらない二人が本当の家族になっていくところは胸に迫るものがあった。
どこか是枝監督の「万引き家族」に通じるところがあると感じた。
ラストに優子はグータラだった父が実は家族の「尼ロック」であることに気づき、自分が「あまろっく」になるんだと決意していくところは、優子の成長であり、脱皮であり、観ていてメチャクチャ気持ちい終わり方だった。
父が美女と結婚するように、優子もいい男と結婚するという対比もいい。
ちょっと都合が良すぎるが・・・。
②江口のりこの芝居
超優秀にも関わらず、人と仲良くできない優子を江口のりこが見事に演じていた。
優子のような人って、たくさんいるのかもしれないと思わせるリアリティがあった。
私は、かなり早い段階で映画の世界の中に引き込まれたが、監督・脚本だけでなく、江口のりこさんの力も大きかったと思う。
<気になった点・容認「できる」ご都合主義な点>
①南雲の恋心
南雲と優子は京大で一緒だったわけだが、何故、美女でもない優子を南雲が好きになったのかが、ちゃんと描かれていない。
しかも南雲は優子と結婚するために一流企業を辞めて、優子の父が経営していた町工場に転職までする。
南雲の転職はラストのオチに使われていたが、転職までするのは少しリアリティに欠けるかな。。。
それでも観客に「二人が上手くいって欲しい!」と思わせるだけの物語になっている。
②父の突然の死
優子の父は健康のためにジョギングを始め、走っている途中に急な雷雨に見舞われて死ぬが、よく考えると、なんで死んだのか分からない。
雷に打たれたってこと?
その後のストーリーのためにも死んでもらう必要があるわけだが、死に方がちょっと強引だったかな・・・。
その他にも都合のいいところはたくさんあり、そもそも二十歳の美女が六十五歳のジジイにプロポーズした上にセックスして子供を授かること自体が超絶都合のいい話なのだが・・・。
そんな都合のいい部分がありながら、それを軽く吹き飛ばすくらいの面白さがあった。
今週はコナンではなく、陰陽師0でもなく、ブルーロックでもなく、是非、「あまろっく」を観て大笑いして泣いて欲しい。