「フォールガイ」ネタバレ!ライアン・ゴズリング主演作がなぜ日本で不発?ハリウッド映画の衰退と邦画の躍進を徹底分析

映画「フォールガイ」を公開初日に鑑賞。

主演は「バービー」でケン役をやったマッチョ俳優のライアン・ゴズリング。
監督は俳優でもあり、スタントマンでもあるデヴィッド・リーチ。

一応原作は1980年代にアメリカで放映されたドラマ「俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ」であるようだが、本作との直接の関係はなさそう。

【評価】

本作を次の6段階で評価してみたい。

A+:もう一度観たい傑作
A-:人におすすめできるほど面白い
B+:面白いけどおすすめはできない
B-:面白くない凡作
C+:怒りを覚えるレベル駄作
C-:途中退出

本作は「B+」
ザ・ポップコーンムービーで、満足する人も中にはいるだろうけど私はイマイチ。
最近の洋画が日本でほとんどヒットしない原因が本作には多く見受けられた。

恐らく本作の初週の興行収入は5位以下から始まり、次の週にはトップ10ランク外になっているだろう。

これは他の洋画も同様で、世界的に大ヒットしても、日本では全くダメ。
このあたりの原因を「フォールガイ」を通して考えてみたい。

その前に、ネタバレあらすじは次のとおり。

【ネタバレあらすじ】

超有名俳優のトム・ライダーの身代わりスタントを務めてきたコルト・シーバース(ライアン・ゴズリング)。

ある日、コルトはトムの主演映画で落下のスタントを行ったところ、失敗し怪我を負う。
コルトは精神的に落ち込み、映画スタッフの一人だった恋人のジョディ(エミリー・ブラント)に何も言わず業界から姿を消した。

18ヶ月後、映画プロデューサーのゲイルから仕事の依頼がくる。
断るコルトだったが、監督が元恋人のジョディであることを知って引き受ける。

コルトへの依頼はゲイルが独断で行ったものであった。
コルトの参加を知ったジョディは黙って去ったことに怒りをぶつける。

コルトはジュディに真摯に謝罪し、なんとかクビにならずに済む。
実はゲイルがコルトを呼んだのには、もう一つ理由があった。
ゲイルによると主演のトム・ライダーが行方不明なので捜索して欲しいという。

仕方なくコルトはトムのホテルに行くと、共演の女優が襲い掛かってくる。
その女優からトムの居場所を聞くと、トムはギャングらしき男たちと付き合っていたという。

コルトはギャングたちに会うと、何故か薬物を飲まされ、コルトは意識が混濁する。
それでもコルトはトムを見つけるべく奮闘していくと、あるホテルで風呂場に氷漬けになった男の死体を見つける。

すぐに警察に通報し、ホテルに行くと死体はなくなっていた。

混乱する中、コルトはトムのアシスタントのアルマから、トムのスマホを渡され、スマホの中の動画に秘密が隠されていることを知る。

しかし、スマホを開くパスワードが分からない。
トムにはポストイットにメモを書きまくる癖があるのを知っていたため、友人のスタンドコーディネーターのダンとともに、再びトムの部屋に進入する。

するとパスワードが見つかり、中の動画を見ると、トムが酔っぱらって仲間のスタントマンとプロレスごっこをしているときに誤って殺してしまう映像を発見した。

ゲイルとトムはグルで、コルトを犯人に仕立て上げたあげく、自殺と見せかけて殺すつもりだった。
しかも18ヶ月前のコルトのスタント中の事故はトムが仕組んだものだと判明。

ゲイルとトムは動画を改造してトムの顔をコルトに改変して世間に公表。
コルトは追われる身になる。

ギャングたちに追われる中、ボートに乗ったコルトは海上にあるタンクに突っ込んで爆破させ、死んだと見せかけることに成功。

コルトは密かに映画製作現場に戻り、ジュディに接触し真相を伝える。
コルトとジュディの策略により、トムはスタント用の車にコルトとともに乗り込ませ、危険な撮影を開始。

撮影の中で真相を話してしまうトム。
一件落着かと思いきや、録音された機器を奪いにかかるゲイルとトム。

激しい争奪戦の中、コルトは録音データを奪い返すことに成功。

その後、映画は主演を変えて製作され、大ヒットしていく。

【ネタバレレビュー】

なんだか全てに既視感がある映画だった。

どこかで見たアクション。
どこかで見たストーリー。

ゲイルとトムがグルだったと言われても、驚きは皆無。
肝心のスタントシーンも「初めての映像体験!」というレベルではなかった。

とにかく新鮮味がない。
これは本作「フォールガイ」だけではなくて、他の洋画作品にも言える。
(例えば「マッドマックス フィリオサ」とか。)

ざっくりいうと最近のハリウッドはネタ切れ感が半端ない。

一方、邦画はネタ切れ感を感じない。
そのあたりを具体的に考えてみたい。

【洋画が邦画に勝てない原因】

日本において「洋画に用がない」「邦画の方がいい」というダジャレな状況に、どうしてこのような状況に陥ったのか、3つの要因を挙げてみたい。

1 洋画の飽きられ感

これは上述したとおり、ハリウッド映画の「ネタ切れ感」の一言につきるが、具体的に書くと次のとおり。

  • 既存作品の続編やリメイクが増え、観客に飽きられやすくなっている(エイリアン、猿の惑星、ライオンキングなど)
  • CG+VFXの過剰な使用による新鮮味の減少
  • 同じようなテーマやパターンを繰り返し

これは今回鑑賞した「フォールガイ」にも当てはまっている。

さすがにスタントマンをモチーフにしているので、CG・VFXの使用は控えていると思うが、それでもゼロではないだろう。

しかし、既存作品のリメイクであり、主人公を殺人犯に仕立て上げるという脚本に新鮮味はゼロ。

2 邦画の質の向上等

本来、映画というものは土着のものであり、自国で製作された作品を自国民が観る傾向にあると思う。

自国で製作されたものの方が、自国民の地続きの社会を描くことが多くなり、テーマも題材も身近なものになるので、興味が向くのも当然である。

昭和の時代は予算的な問題からくる技術的な質がハリウッドに比べて差があったから、「邦画はダサい」というイメージがあった。

そこにCG+VFXが登場し、低予算でも高品質な作品が日本でも製作できるようになってきた。

典型例は昨年大ヒットした「ゴジラ -1.0」。

恐らくハリウッド版ゴジラの10分の1以下の予算で作られているだろうが、映画としてのルックスは負けていない。(「ゴジラ-1.0」は米アカデミー賞の「視覚効果賞」を受賞」)

CG・VFXの過多により新鮮味を失ったハリウッドとは逆に、邦画はCG・VFXの登場により復活したといっていいだろう。

「質の向上」とは直接関係ないが、「テレビ局による邦画製作の活性化」というところも見逃せない。

人気テレビドラマの映画化など、テレビ局が積極的に映画製作に関わるようになり、邦画のシェアが拡大したことは間違いないだろう。

3 日本が世界に誇る文化「漫画」の存在

日本の映画界で最も稼ぐジャンルはアニメ。
実写の邦画では50億円の興行収入があったら超大ヒットといっていいところ、アニメは100億円を超えるものが年に何本もある。

これは日本のアニメが他国のアニメより技術的に勝っているからではない。
日本には膨大な量の漫画があるからである。

とにかく漫画「雑誌」が多数ある。

幼少期向け(「コロコロコミック」)、学生向け(「少年ジャンプ」)、青年向け(ヤングジャンプ)などなど。

ご存じのとおり、漫画といえど、非常に深いテーマを扱ったものも数多くあり、ここから映画化したいものを選べばいい。

もちろん現実の映画製作は簡単なものではないだろうが、他国の状況から比べたら格段に企画しやすい状況にあるだろう。

例えば2024年に製作された実写の邦画の中で漫画を原作としているものは、「ブルーピリオド」、「先生の白い嘘」、「違国日記」、「からかい上手の高木さん」、「不死身ラヴァーズ」、「カラオケ行こ」などなど、数え上げたらキリがない。

これにアニメを加えれば、とんでもない数になる。

更に観客の「知っているものを観たがる」という行動原理も漫画原作の強みである。

この行動原理は、どこの国の人も同じであると思われるが、特に日本国民は映画を観る習慣がなく、年に1~2本程度あるため、「ハズレ」を引きたくない心理が働き、全く知らない映画を観るよりは既に認知していたり評判を知っているものを鑑賞する。

つまり漫画の連載や、単行本の販売は映画の宣伝になっているわけである。

アメリカの漫画市場の状況は知らないが、漫画原作のアメリカ映画といえばマーベルコミックの「スパイダーマン」、DCコミックの「バットマン」などが思い浮かぶくらいで、明らかに日本ほど漫画原作の映画は少ない。

しかもマーベル・DC原作の映画も限界を迎えており、ここ数年、日本でヒットしたという記憶はない。

日本映画のかなりの部分を、実は「漫画」が支えているとうことは断言できそうである。

今回鑑賞した「フォールガイ」の話から、かなり離れてしまったが、この映画を観ると洋画が観られなくなった要因が見えてくるので、別の意味で鑑賞する価値があるかもしれない。

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