映画「怪物」ネタバレ注意!是枝裕和監督最新作の感動と驚きの真実に迫る映画レビュー

本作の監督は監督は「万引き家族」の是枝裕和。
これまでの是枝監督の作品は自身で脚本を手掛けていたが、今回は坂元裕二さんという方が担当。

この坂本さんと東宝のプロデューサーである川村元気さんという方が企画し、是枝さんに監督を依頼したらしい。

依頼されて製作された映画なので、是枝監督らしさみたいなものが薄まるかと思ったが、そんなことはなかった。
徐々に真実が分かっていく展開は「万引き家族」と同じ。

そして、どこか張り詰めていて、それでいて疲れさせ過ぎない緊張感が最初から最後まで続く。
もの凄く「上手く作っている」という感じ。

主人公は母子家庭で育つ小学5年生の麦野 湊(むぎの みなと)くん。
ある日、母親(安藤サクラ)が、湊くんの怪我の原因を問いただす。

湊くんは、担任の保利(ほり)先生(永山瑛太)から暴力と暴言を受けたと告白。
当然、母親は学校に抗議に行く。

形式的に謝る保利先生と校長たち。
母親が真実を突き止めるため、何度か学校に通っていると、保利先生は暴力など振るっていないし、それどころか湊くんが同級生の星川くんをいじめていると言い出す。

母親も、保利先生も、真実を知るべく他の生徒たちに聞き取りを始める。
それを問題視した先生たちは、無理やりPTA会議を開き保利先生に謝罪をさせる。

更に問題をかぎつけたマスコミにより報道され、保利先生は辞職に追い込まれる。

しかし、真実は違った。
いじめられているのは湊くんではなく、星川くんであった。
星川くんはクラスの男子から、日々、嫌がらせを受けていた。

湊くんと星川くんは親友であったが、いじめに巻き込まれないよう、教室では湊くんは星川くんに話しかけることはなかった。

また、星川くんは父子家庭で、アル中の父親から虐待を受けていた。

湊くんと星川くんの友情は、山中に捨てられた電車で遊ぶ中で強くなっていく。
そして最終的に二人の友情は、ほとんど愛情に近いものになっていく。

ある嵐の夜、湊くんと星川くんは、二人で山中の電車に向かう。
真実を知った保利先生と湊くんの母親は、嵐の中で二人を追って山に入り電車にたどり着く。(二人を発見した描写はない。)
嵐が去った次の日に、湊くんと星川くんが楽しそうに走り回っているところで映画は終わる。

アクション映画でも、ホラー映画でもないのに、グイグイと引き込まれていき、2時間の上映時間があっという間。

時間を忘れさせる映画は当然いい映画。
ネット配信が始まったら、また観てしまうかも。

ただし、若干の違和感は残る。
映画の前半に保利先生が湊くんのお母さんに謝罪するシーンで、突然あめ玉を口に入れるなど、保利先生を変人キャラクターとして描いているにも関わらず、後半はまともな先生となっている。

役の性格に一貫性がなく、極端にいうと、前半と後半では、ほとんど別人になっている。
謝罪シーンの保利先生の演出が過剰だった。

それと学校全体で問題の責任を保利先生に押し付けてゆくが、それはリアリティに欠ける。
校長先生「だけ」が、保利先生に責任を押し付ける形にした方がよかった。

そういった細かいところを差し引いても「凄いものを観てしまった」という感覚は残る。
この感覚は「Joker」以来か。

物語は真実が少しずつ明らかになるサスペンス的な展開で進むが、ラストに近づくにつれ、湊くんと星川くんの少年の純粋な絆の美しさが強調されていき、そこに魅入ってしまう。

そして「怪物はこいつだ!」と決めつけるお前こそ怪物だ。
そう問いかけている気がしてきて鑑賞後に怖くなってくる。

間違いなく、今年ナンバーワンの映画。
観終わった後、いろいろと観た人同士でおしゃべりできる映画でもある。

年齢制限もないし、子供(小学生高学年以上)と観てもいいかも。
お勧めです。

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