映画「マッチング」ネタバレ解説と突っ込みポイント!内田英治監督作品の楽しみ方【サスペンススリラー】
映画「マッチング」を公開初日に鑑賞。
脚本・監督は「ミッドナイトスワン」の内田英治。
原作の小説も内田監督が書いている。
主演は土屋太鳳。
Snow Manの佐久間大介もメインキャストとして出演している。
映画のジャンルはサスペンススリラー。
犯人は誰だ!?的な映画。
公開初日の最初の上映で鑑賞したが、スクリーンは満席。
来ている客は土屋太鳳ファンなのか、佐久間大介ファンなのか、はたまた内田監督ファンなのか、よく分からん。
本作はマッチングアプリにより「アプリ婚」をした新婚夫婦が次々と殺されていき、そこに主人公の輪花が巻き込まれていくという物語。
そして次第に犯人と輪花の家族の因縁が明らかになっていく。
映画の評価は3.5点(5点満点)。
凡作。
観客のほとんどは先の展開が読めたと思われる。
そして、とても「意外な犯人」とは呼べない人物が犯人だった。
突っ込みどころも多くあったが、後述するとおり、突っ込みどころを突っ込んで楽しむのが内田監督作品の鑑賞の際のお作法。
突っ込みどころを容認できるかできないかで、賛否が分かれるだろう。
<ネタバレあらすじ>
ウェディングプランナーの輪花(りんか 土屋太鳳)は、昔から恋愛が苦手で彼氏なし。
幼いころから父子家庭で育った輪花は、父を安心させるためにも結婚しなければと思い始め、友人から勧められたマッチングアプリ「ウィルウィル」に登録する。
アプリにより輪花はトム(佐久間大介)という男と会うこととなる。
待ち合わせ場所で輪花とトムが出会うと、トムは「私は生まれて直ぐにコインロッカーに捨てられ、運のない人生を歩んできた。」などといきなり自分の暗い人生を話し出す。
トムは孤独死により腐乱した死体の処理を行う特殊清掃業務を仕事にしており、その影響で、常に長靴を履いていた。
気味悪がった輪花は、二度と会うつもりはなかったが、何故かトムは輪花の自宅を調べあげ、ストーカーのごとく輪花に会いに行くのだった。
その頃、世間ではマッチングアプリにより結婚した若い夫婦が連続して殺される事件が発生していた。
その事件の影響でアプリ登録者が激減。
アプリ会社は挽回するため、輪花が働く会社とコラボ企画をすることなる。
その企画で輪花はアプリ会社のプログラマーである影山剛(金子ノブアキ)と親交を深めていく。
ところが、輪花のところで結婚式を挙げたアプリ婚の夫婦が連続して殺されてしまう。
マスコミは輪花に疑惑を向けて報道し、輪花は仕事ができなくなってしまう。
失意の中、帰宅するとポストに若いころの父の不倫現場写真(ベッドでの2ショット)が入っていた。
父に見せると不倫を認め、輪花が幼いころに母が家を出ていったのも不倫が原因だったことを告白する。
父と不倫相手の節子は当時流行っていた「チャット」で出会ったという。
当時、輪花の父は節子の住むアパートに出向いて別れを告げたが、聞き入れてもらえない。それどころか妊娠しているという。
それでも父は二度と会わないと言い捨て、アパートを出ていこうとすると、節子は父の背中を刺してしまう。
これにより節子は逮捕され、以降、輪花の父は節子と会っていないという。
父の過去を聞いた輪花は激怒し、出て行ってしまう。
ある日、節子と思われる女性から輪花の父に電話が入る。
父は節子の呼び出しに応じて車で向かう。
その頃、輪花の友人の尚美からトムが尚美の前に現れたとの連絡が入る。
輪花は尚美が住むマンションに行くも、不在だったため帰ろうとしたところ、マンションの上から尚美の遺体が落ちてきた。
絶叫する輪花。
輪花はトムが節子の息子で、一連の殺人事件の犯人はトムであると思い始めていた。
そこに父の死の知らせが届く。
警察とともに現場に行くと、橋の上から首をくくった父の姿があった。
警察によると自殺に見えるが、他殺の可能性もあるという。
輪花が悲しみにくれているところに、アプリ会社のプログラマーである影山が現れる。
影山はトムを調べていくうちに衝撃の事実が分かったので、一緒に来てくれと話す。
輪花は影山に連れられて、ある廃屋となったアパートの一室に入る。
そこは以前、節子が不倫で狂うほど苦しんでいた場所だった。
そして影山は節子の息子であった。
影山は母の復讐のために一連の殺人事件を行い、そして輪花を殺害しようとして襲いかかっていく。
そこにトムが現れ、影山を撃退。
影山は一連の殺人事件の犯人として逮捕される。
後日、トムは輪花に真実を知りたくないかという。
輪花はトムに連れられ、山奥の小屋に向かう。
そこには廃人となって車いすに乗る女性と、その女性を世話をする女がいた。
輪花は車いすの女性を節子だと思い、父の不倫で苦しめたことを謝罪するとともに、息子(影山)を使って事件を起こしたことを許さないと告げる。
ところが、実は世話係の女の方が節子で、車いすの女性は輪花の実の母親であった。
母は輪花が幼いころに家を出ていったが、その後、節子に捕まり二十数年もの間、軟禁されていたのだった。
節子と輪花はもみ合いになり、節子がハサミで刺し殺そうとしたところを、トムが身を挺して守り、節子は逮捕される。
輪花はトムを見直し、初めて出会った水族館でデートすることになる。
そんな中、またアプリ婚の殺人事件が発生。
実は影山だけでなく、トムも連続殺人事件の犯人であったことが分かったところで映画は終わる。
<レビュー>
平易なストーリーで、観ている人の大半が映画の早い段階で犯人が分かってしまう。
「一番怪しい人は絶対に犯人ではない」という基本通りの脚本。
自分が犯人だと思う人が、ちゃんと犯人であると、それはそれで気持ちいい。
様式美と言っていいだろう。
そして、冒頭書いたとおり、突っ込みどころが多くて、それがとても楽しい。
一先ず、5つの突っ込みを入れてみたい。
① 犯人の殺人の動機が弱い
輪花の父を恨むのは分かる。
その娘を恨むのもギリギリ分かる。
アプリ婚をした人たちを殺すのは理解し難い。
マッチングアプリを使って「不倫をする人」を殺人の対象にするのならば分かる。
② 過去と現在の節子の顔が違い過ぎる
輪花の父の不倫の回想シーンが何度も出てくるが、そのときの節子と現在の節子の顔が違い過ぎる。
現在の節子(輪花の実の母の介護をしている女)は斉藤由貴が演じているのだが、過去の節子は別人が演じている。
父の不倫は20年以上前とはいえ、ここまで人の顔は変わらないはずだ。
③ 殺害後の処理
殺害されたアプリ婚の夫婦は、全て顔に十字の傷を刻まれ、鎖でつながれていた。
殺害後に、何故そのような処理をしたのかが不明。
単に監督が見た目の派手さを求めて行った演出としか思えない。
もしかしたら私が分かってないだけで、意味があるのかもしれない。
誰か教えて。
④ 徐々にマッチングアプリと関係ない話になっていく
切っ掛けはマッチングアプリだったり、チャットだったりになっているが、直接的には関係なく、単に気が狂った母子の物語。
⑤ ラストの落ち(トムも殺人鬼だった)は無理やり感がある
本作はサスペンススリラーというジャンルになるが、ホラー要素もあり、内田監督としては原作小説をホラーと書いたようだ。
ホラーと言えばバッドエンディング。
恐らくそう考えて無理やりトムも殺人鬼だったことにしたのだろう。
しかし、本作の後半ではトムの優しさが描かれており、実は殺人鬼でしたでは、後半のキャラクター造形から乖離してしまう。
例え不遇の人生を歩んだとしても、何故、アプリ婚の夫婦だけを殺人の対象にしたかが不明。
突っ込みどころは多くあるが、小さいことは気にしないワカチコワカチコ。
それが内田映画を楽しく観るコツ。
ということで、エンタメ映画としては悪くない。
今週公開の「マダム・ウェブ」が相当評判が悪いので、どうしてもデートで映画を観る必要がある人は大ヒットアニメ「ハイキュー!」か、本作「マッチング」を観ればいいかと
思う。
<追伸>
映画を観た方に聞いたのですが、「殺害後の処理」について、派手な殺し方はトムがやったもので、影山が殺した人間は横たわっていただけとのことでした。つまり、トムと影山の殺しの違いを、より分かりやすくするための演出だったようです。そして影山が殺したのは輪花を苦しめるために元彼カップルだけを殺したとのことです。でも、元カレを殺しても、そんなに輪花は苦しまないと思うけど。。。だって「元」だもん。 いずれにしろ、理解が足りないままに、映画に突っ込んでしまってすいませんでした!
小説版を読むと映画でわからなかった部分が書かれているのでおすすめです!!
なるほど! 小説版読んでみます!
影山は輪花の職場の同僚(親友)も殺していますよ。そこは映画内で自分で認めてます。輪花の精神を追いつめるために親交があった人達をターゲットにしたのだと思われます。