「千年女優」再上映レビュー:難解なラストと「ネタバレ」解釈の興味深い謎

2002年に公開されたアニメ映画「千年女優」を映画館で鑑賞。
本作は2010年に亡くなった今敏(こんさとし)監督の作品。

今監督は46歳という若さで死んだため、長編監督作品は4つしかない。
「千年女優」は2作目。
この度、私がいつも行っている映画館で再上映された。

以下、あらすじ。(ネタバレあり)

物語は75歳となった伝説の大女優・藤原千代子へのインタビューから始まる。
千代子は女学生の頃、映画会社から女優としてスカウトされる。

母親に女優になることを反対され、悩んでいるところに警察に追われる男と出会う。
千代子は怪我をしていたその男の傷の手当てをするも、男は謎の鍵を置いて去っていく。

その謎の男「鍵の君」を千代子は再開したいと強く願い、常に鍵を肌身離さず持ち歩くようになる。

千代子は「鍵の君」が満州へ行ったことを知る。
映画の撮影が満州で行われることから、千代子は女優になる決意をする。

その後、「鍵の君」を探す千代子の半生と、これまで千代子が演じてきた多くの映画の回想が続く。

鎌倉時代と思われるシーンから始まり、江戸時代、明治時代、昭和と回想される映画は何故か歴史の流れに沿ったものとなっていた。
そして全ての映画が謎の男を追う物語であった。

インタビューのラストに千代子は病に倒れる。
医者によると余命いくばくもないという。

千代子が横たわるベッドの横で取材した者が、ようやく鍵の君に会えますねと言う。

すると千代子は「会えなくてもいい。だってあたし、あの人を追いかけているあたしが好きなんだもの。」とつぶやき、千代子が最後に出演したと思われる宇宙飛行士の役を回想し宇宙の果てへと進むところで映画は終わる。

本作を含め今監督作品は、どれも作家性が非常に強く難解。
しかも回想シーンなのか、映画のシーンなのか分からないトリックを使っているため、観客は混乱する。

特にラストの「あの人を追いかけているあたしが好き」というセリフは解釈が難しく、人によっては嫌悪感すら覚えるかもしれない。

オタク評論家の岡田斗司夫が本作の解釈として、全てが女優・千代子の作り話で、「鍵の君」など実はいないとして観るべきだと主張していた。

確かに岡田の解釈だと最後のセリフも納得がいく。

岡田の解釈を前提とすると、恐らく、「我々が生きている実世界もウソとホントの挟間に存在するのではないか?」が本作のテーマであったり、メッセージなのかもしれない。

本作は低予算で作られたらしいのだが、とても低予算とは思えないほど作画のクオリティが高い。

今のアニメのようにCGを使わない昔ながらのセルアニメなので、アニメーターの方々は本当に大変だったと思われる。

今監督は4つの作品しか残さなかったが、世界中のクリエーターに大きな影響を与えている。

影響を受けたとされる者で有名なのが、数々の映画賞に輝いたサイコスリラー映画『ブラック・スワン』の監督として知られるダーレン・アロノフスキー。

「ブラック・スワン」の劇中、今監督の初監督作品「パーフェクトブルー」と完全に一致するシーンがあり、アロノフスキーもオマージュであることを認めている。

個人的には難解な映画は好きではないが、今監督作品は、もう一度観てもいいかと思わせる力を持っている。

是非、皆さんも今監督作品に挑戦してみてはいかがか。

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