「コットンテール」ネタバレあらすじと感想:日本とイギリスの合作映画で、リリー・フランキー主演の感動作!【ネタバレ注意】

今週から公開の映画「コットンテール」を鑑賞。
主演はリリー・フランキー。

イギリスと日本の合作映画で、監督はパトリック・ディキンソンというイギリス人。
本作はパトリック監督の初長編映画となっている。

タイトルの「コットンテール」とは、イギリスの童話『ピーターラビットのおはなし』に登場するウサギのピーターの妹の名前。

妻を失くした男が、妻の遺言に従い、イギリスの湖に散骨に行く物語。
それだけの話なのに、ラストでは涙が溢れ出た。

パトリック監督は、早稲田大学で日本映画を学んだ経験があり、日本での撮影や、日本語のセリフに違和感を覚えるシーンはなく、日本人の監督が撮った純日本映画と違いを感じなかった。

評価は4.0点。(5満点)
秀作。
今週末公開作品の中では一番お勧め。

以下、ネタバレあらすじ。

<ネタバレ>

最愛の妻「明子」を失った大島兼三郎(リリー・フランキー)は、妻の葬儀で寺の住職から明子からの手紙をもらう。

明子は認知症が進行して亡くなったのだが、意識がはっきりしているうちに手紙を書き、住職に託していたのだった。

手紙には自分の遺灰をイギリスのウィンダミア湖に散骨して欲しいと書かれていた。

ウィンダミア湖は明子が幼いころに家族で旅行し、ウサギを追いかけた思い出のある場所であり、いつか兼三郎と息子のトシの三人で行きたがっていた場所でもあった。

そして明子の遺品の一つであった絵本『ピーターラビットのおはなし』の中から、ウィンダミア湖付近で撮られたと思われる幼い明子と両親が写った写真が出てきた。

明子の望みを叶えるため、兼三郎はトシ・トシの妻・娘の4人でイギリスに向かう。

しかし、作家である兼三郎は家族を顧みずに自分の世界にこもりがちに生きてきたため、息子であるトシとの間には深い溝があり、会話も少なかった。

イギリスに到着した次の日にウィンダミア湖へ行く予定であったところ、一刻も早く明子の願いを叶えたかった兼三郎は一人で向かう。

ところが兼三郎は逆方向の列車に乗ってしまう。
乗客から逆方向であることを教えられ、兼三郎は列車を降りるも、戻りの列車の出発時刻を過ぎていた。

仕方なく兼三郎は駅にあった自転車で走り出す。
しかし、兼三郎は道に迷ってしまい、付近の農場に助けを求める。

その農場にはジョンという男性と娘メアリーがいた。
事情を聴いたジョンとメアリーは、兼三郎に食事と着替えを与えて休ませた後、何百キロもの遠方にあるウィンダミア湖まで車で送ってくれるという。

ジョン親子との交流の中で、兼三郎はジョンも妻を失っていたことを知る。
ジョンも兼三郎と同じく、妻の死により失意の中にあったが、娘のメアリーの支えで立ち直ったという。

無事に兼三郎はトシたちと合流するも、写真にあった場所が見つからない。
車を走らせ、探しまくるとともに、地元市民に聞き取り。

次の日、なんとか場所が分かり、兼三郎とトシは湖に向かう。
その道中、兼三郎は足を止め、トシに明子の病院での介護の話をする。

明子は亡くなる直前、家族の名前も分からなくなった意識の中、全身に激痛が走る症状となった。
それを見た兼三郎は明子を楽にしてやろうとしたが、できなかったと泣きながら告白する。

その後、二人は湖に明子の遺灰を流す。
湖を離れるとトシの妻と娘が待っており、そこにいたウサギを4人で追いかけるところで映画は終わる。

<ネタバレここまで>

ロードムービーの形式になっていて、日本からイギリスに渡り、旅をする過程で兼三郎の意識が徐々に変化していき、そこをリリー・フランキーが絶妙に表現していた。

兼三郎の妻への深い愛情と愛するが故に何もしてやれなかった罪の意識が観ているものに深く刺さっていく。

そんな兼三郎のささくれ立った心を、ジョン親子との交流や、トシとの向き合いの中で洗い流されていくところに観客の心は動かされ、涙する。

明子の遺言は、兼三郎とトシとの間にあるわだかまりを解消させるための天国からの仕掛けであり、しかもまんまと兼三郎とトシは新たな親子関係のステージに入っていく。

そこにも観客は清々しい感動を覚える。

イギリスと日本の合作のラブストーリーというところもポイントで、場所も文化も違えど、人間同士の愛は同じ。

だからこそ、ジョン親子は兼三郎の気持ちに共感し、遠方まで送ってあげようと決意したのだろう。

物語には直接関係ないジョン親子との交流は、この映画において大きなウェイトを占めていると思う。

本作は普遍的な夫婦関係、親子関係を扱ったシンプルなヒューマンドラマだったが、それ故に広く長く愛される作品になったと思う。

上映時間94分という短さも、大変観やすく、気持ちよく映画を観終えることができた。
映像のクオリティも高く、とても監督の初長編作品とは思えない出来栄えであった。

今後も、パトリック・ディキンソン監督作品は要注目だ。

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