映画『つんドル』感想とネタバレ!元アイドルの人生が赤の他人との同居でどう変わったかを詳しく解説

先週から公開の映画「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」を鑑賞。
通称「つんドル」。

大木 亜希子が書いた同名小説が原作。
主演は元乃木坂46の深川 麻衣。
監督は新鋭の穐山 茉由(あきやま まゆ)。

本作品の内容はタイトル通り。
人生に行き詰り、心を病んでしまった元アイドルが、見知らぬおっさんに癒されて再生していく物語。

原作者である大木亜希子の実体験に基づいているとのこと。
実体験に基づいていることが要因なのか、メチャクチャ面白い作品だった。

あらすじ(ネタバレあり)は次のとおり。

元アイドルで今はライターの仕事をする安希子(深川麻衣)。
ある日、安希子は駅前でつまずき倒れる。
何故か過呼吸になり、一時的に立ち上がれなくなる。

念のため、安希子は精神科に行くも、先生の前では全く問題なく、人生は充実しているなどとウソをつく。

しかも超早口。

結局、安希子は会社をクビになり、1記事千円のフリーライターになってしまう。
貯金残高は10万円。

風呂なしのボロアパートに住む安希子であったが、家賃も払えそうにない。
すると友人から、家賃3万円の住居を紹介される。

家賃は激安ながらも、56歳のサラリーマンである「ササポン」(井浦 新)との同居が条件。

背に腹は代えられないと、安希子はササポンとの同居を決意する。
ササポンの自宅は都内の一軒家。

ササポンは「適当」が口癖の「ザ・いい人」。
経済的に安定すればすぐに出ていくつもりの安希子だったが、マイペースに生きるササポンの姿と優しさに触れて、徐々に何かを感じ取っていく安希子だった。

その後、安希子はバイトをやりつつ、フリーライターの仕事を続け、人生の逆転劇を夢見つつも、そうはならない現実に焦っていた。

あるとき、友人の男性と仕事を兼ねて旅行に行くことになる。
旅先で安希子はその男に告白し、キスを迫る。

しかし、その男には彼女がいて、もうすぐ結婚するという。
平静を装う安希子だったが、フラれたショックは大きかった。

そんなとき大手出版社から声がかかり、編集長と会えることとなる。
大喜びして、待ち合わせの高級ホテルに向かう安希子。

しかし、ドタキャンされてしまう。
更に古くからの友人が結婚。

安希子は、お祝いのためにその友人宅に行く。
平凡ではあるが、幸せをつかんだ友人をうらやみ、般若の顔になる安希子だった。

仕事ナシ、男ナシ、残高10万円。
どん底に落ちた安希子は、ストレスの影響なのか、虫垂炎で倒れてしまう。

駆けつけてくれたのは、出張先から戻ってきてくれたササポンだった。

ベッドの上で「家族でも、恋人でもないのに助けてくれたありがとう」と言うと、ササポンは「そんなの関係ある?」と聞き返し、その優しさに号泣する安希子だった。

復帰した安希子は、惨めな自らをさらけ出し、見知らぬおっさんと同居することとなった経緯をネットに投稿。

これがバズり、安希子とササポンは一躍有名になる。
更にドタキャンされた大手出版社からも再び声がかかる。

遂に安希子はササポンの自宅から引っ越しをする。
ササポンとの最後の会話では、早口はなくなり、安希子は穏やかな笑顔を見せてササポン宅から出発する。

観客から見ると、安希子の人生は、そんなにどん底とは思えない。
ササポンも映画内で「夢をもって全力で前に進む安希子は輝いている。」という。

しかし、安希子自身は自分の人生が詰んでいると思い込んでいる。
これは安希子だけでなく、多くの人々が同じような思いをしているのではないだろうか。

アイドルとして成功しなかった自分。
男にフラれた自分。

認めたくない過去が、更に未来への不安と焦燥を作り出す。

大事なのは過去や未来ではなく「今」である。

今幸せになれない人は、未来になっても幸せになれない。
未来がやってきても、その先の未来が不安になるから、いつまでたっても幸せになれない。

安希子は淡々と今を生きるササポンを見て、過去との決別を覚悟し、「今」に集中できるようになっていく。

「今」に集中するというのはなかなか難しいと思うが、実践は簡単。
今やるべきことをやればいい。

本映画の配給は日活であるが、内容は松竹大船調であると感じた。
松竹大船調とは暴力、裸などが描かれない、家族で楽しめる映画のことで、代表的なものは山田洋次監督作品。

本作品も山田監督作品と同じく、最初はコメディなのだが、徐々に人生の本質に迫っていく。

松竹大船調をダサいと思う人も多いと思うが、私は嫌いじゃない。
むしろ大好きかもしれない。

松竹大船調の作品こそ、映画を観る意味だと思う。

にも関わらず、本作品の上映本数の少なさには驚きだ。
公開初週ではないが、今回、私が観た映画館の上映数は1回だけ。

確かにCGもアクションもない地味な映画であるが、こういう映画をたくさんの人に観てもらいたいんだけどなぁ。。。

ちなみに主演の深川麻衣は、2021年に「おもいで写真」という映画にも出演しているが、これも面白いのでお勧め。

「おもいで写真」では、夢破れたとき、そして愛されなかったとき人はどう生きるかを描いて、その悩み多き少女を深川麻衣が見事に演じている。

現在、「ゴジラ -1.0」が大ヒットしているが、ゴジラを観た後は是非、深川麻衣を観て欲しい。

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