映画「市子」のネタバレ解説と感想 – 衝撃の二重生活と過去の秘密が明かされるストーリー!

映画「市子」(いちこ)を鑑賞。

監督の戸田 彬弘が書いた戯曲「川辺市子のために」が原作。

「川辺市子のために」は戸田彬弘が主宰する劇団チーズtheater旗揚げ公演作品でもある。
映画版の主演は杉咲花。

あらすじ(ネタバレあり)は、次のとおり。

市子は同棲していた長谷川義則(若葉竜也)からプロポーズされる。
しかし、翌日、市子は義則がいない間に失踪。

しばらくしたら戻ってくるだろうと思っていた義則のところに刑事が現れる。
山中で白骨化した女の遺体が見つかり、そのことで刑事は市子を追っていた。

しかし、刑事によると市子という女は川辺家の戸籍にはない人間だという。
実は市子は母が離婚したDV夫との間に離婚直前に身ごもった子供であり、DVを避けるためか、役所に出生届を提出せずに育てられていたのだった。

更に市子の3つ下の妹である月子は、筋ジストロフィーで寝たきりの生活を送っていた。
そして市子は小学生の頃から月子になり代わり、月子として学校に通っていた。

市子の行方を追っていた義則は、高校生の頃に市子に思いを寄せいていた北秀和にたどり着く。

北が住むアパートに市子がいたことに気づいた義則は、北を問い詰め、市子の過去を知る。
北によると、市子は義父にレイプされそうになったところで義父を殺してしまったという。

北は市子の殺人を目撃したが、市子を愛していたため、義父の遺体の隠蔽に加担してしまう。

義則は北に他言しないことを約束をしていたため、北の行為を警察へは通報せず、次に市子の母親を訪ねる。

市子の遺留品から母親の居場所にたどり着き、今度は母親から市子の忌まわしい過去を聞く。

市子が高校生と思われる頃、介護と月子の身代わりの人生に限界が来ていた市子は月子の生命維持装置を外し、月子を殺してしまう。

仕事から帰ってきた市子の母親は、月子の遺体を見て「ありがとう・・・。」と市子に告げるのだった。

市子の出生の秘密と壮絶な人生を知り、義則は泣き崩れる。

一方、北のところに身分証を持った北見冬子という自殺志願者が現れる。
そこに市子から北と冬子に自分が今いるところに来て欲しいとの連絡が入る。

北と冬子は車で市子のところに向かい、そこには市子がいた。

次の日、北と冬子と思われる遺体が海中に落ちた車の中から見つかったというニュースが流れる。

鼻歌を歌いながら田舎道を市子が歩いているシーンで映画は終わる。

作者のテーマや、メッセージは分かりづらいが、ミステリー映画としては十分に見応えがある作品であった。
市子を演じた杉咲花の素晴らしい演技により、衝撃的なストーリーにも関わらずリアリティがある。

そして何より市子の二面性が面白い。

義則を心から愛し、義則のプロポーズに涙し、義則のためを思って失踪した心優しい市子。
自分の人生のために、妹を殺し、父を殺し、愛してくれた男も殺す冷酷な市子。

どちらが本当の市子なのか観客の意見は分かれるだろう。
市子の人生に同情心を抱くか、嫌悪感を抱くか。

面白い映画というのは、観終わった後に色々とおしゃべりできる。
本作もその一つ。

なお、映画では描かれなかったが、今後、市子は冬子の身分証明書を使って冬子として生きていくのだろう。

そうなると市子パート2「冬子」という続編を作ることが可能となる。
そのためには「市子」がヒットすることが条件になるので、これを読んでいる人は必ず「市子」を観るように願う。

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